アメフト不毛の地で「気づいたらチームを作っていた」→トップカテゴリーへ 福岡SUNS・吉野至さん

一般社団法人福岡SUNSの代表理事・吉野至さん

日本社会人アメリカンフットボールリーグ・Xリーグでトップカテゴリー「X1 Super」に属するPLEIADES福岡SUNS。そのチームを運営する一般社団法人福岡SUNSの代表理事・吉野至さんがこのたび神戸のラジオ局・ラジオ関西の番組にゲスト出演し、アメフト不毛の地とよばれた九州・福岡でチームを作った経緯や、チームの今の取り組みなどを語りました。

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福岡SUNSは、九州初のXリーグ加盟チームとして2017年に創部すると、2年間で21連勝を達成し、2019年から1部の下位カテゴリー「X1 AREA」へ。そして、2022年からは、チームの悲願だった1部の上位カテゴリー「X1 SUPER」での戦いに身を置いています。チーム名はメインスポンサーの変更に伴って何度か変わり、今年3月からは地元飲料ブランドの「PLEIADES」(プレアデス)が冠につきました。

そのチームを立ち上げた1人が、吉野さんです。運営のトップでありながら、いまも現役選手であり、キッカー(K)/パンター(P)として活躍するだけでなく、ヘッドコーチ(HC)やオフェンスコーディネーター(OC)も担当しています。昨シーズンまではキャプテンも務めていました。

関西大学時代には日本一も経験した吉野さん。就職後、転勤で福岡に移ったことが、アメフトチーム設立の原点だといいます。

当初、福岡に知人がいなかったという吉野さん。西南学院大学アメリカンフットボール部グリーンドルフィンズのコーチとしてサポートし始めると、チームがめきめき成長。ヘッドコーチとなってから2015年には甲子園ボウル出場権をかけた全日本大学選手権西日本代表決定戦に九州勢で初めて進出という快挙も成し遂げます。

そこから、「気づいたら仕事を辞めて、気づいたら社会人のアメフトチームを作っていた」と吉野さん

背景にあったのは、九州ではアメフトの環境が整っておらず、せっかく指導した選手たちが地元でアメフト選手としての進路を見つけられないジレンマに直面したことでした。そこで吉野さんはアメフト不毛の地とまで呼ばれた九州・福岡で、自身がアメフトに生きる道を選び、クラブチーム・福岡SUNSの立ち上げを決意し、実行に移します。

しかし、アメフトは地元ではほとんど無名のスポーツ。草創期は営業活動にも四苦八苦するなど、「初めはいろんな人に反対をされながらスタートしましたね」(吉野さん)。

それでも、次第に地元に受け入れられ、成長を続ける福岡SUNS。Xリーグにおいては若いチームですが、その若さと勢いがチームの魅力だと吉野さんは話します。

同チームでは、自分たちで魅力を作り出してファンを引きつけ、アメフトの人気を高める独自の取り組みを行っているそうです。

元プロ野球選手や元ラグビー選手といったアメフトとは別のプロスポーツからの転向組も続々と加われば、アメフトになじみのない層にもアピールする試みにも着手。オフェンスライン(OL)の岩元駿介選手は、Netflixの人気ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』の出演で一躍名をとどろかせ、福岡の地上波の番組にもレギュラー出演するなど、俳優・タレントとしての活動も行っています。以前には、お笑い芸人・元ブリリアンのメンバーで、大学時代には甲子園ボウルに3度出場し大学日本一の経験を持つコージ・トクダ(現、コージ)さんが在籍したことでも話題を呼びました。

さらに、福岡SUNSは、選手の出身スポーツを生かし、マルチスポーツ教室を立ち上げるなど、地域への還元にも注力。吉野さんいわく、子どもたちにスポーツの魅力を伝え、好きなスポーツを見つける機会を提供するねらいがあるそうです。

多くの選手が平日はサラリーマンとしてそれぞれの仕事に就きながら、週末のみ練習に参加する環境で、選手として高いレベルを保っている、福岡SUNS。吉野さんは「選手たちが社会人としても一流であることはものすごく重要」と、選手一人ひとりがアメフトだけでなく仕事にも責任を持つことが、チームの魅力につながっていると胸を張りました。

九州唯一となる「X1 Super」のチームを率いる吉野さんの奮闘ぶりとあわせて、さらなる躍進が期待される新シーズンの福岡SUNSに、今後も注目です。

※ラジオ関西『アスカツ!』2024年5月4日放送回より

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