過去の債券買い入れ、利上げ効果弱めた可能性=シュナーベルECB理事

[フランクフルト 28日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事は28日、過去の大規模な債券買い入れが利回りの上昇を抑制し、その後の利上げの効果を弱めた可能性があるとの認識を示した。

ECBは、2015─22年にインフレ率を上向かせるため5兆ユーロ以上の債券を購入した。しかしコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響で物価が想定より大幅に上昇し始めたため方針を転換した。

ECBは現在債券保有残高の縮小に動いているが、シュナーベル氏は、ECBがまだ保有している膨大な債券がインフレ対策の妨げになっている可能性があると指摘した。

東京のイベントで「リスクプレミアムは多くの市場セグメントで引き続き圧縮されている可能性があり、金融情勢がそうでなかった場合よりも緩和的になっている可能性がある」と指摘。「これが最近の引き締めサイクルで金融政策の波及効果を弱めた可能性がある」と述べた。

過去10年間の債券買い入れはストレス時の金融市場安定に役立ったが、 中銀の損失や市場機能の阻害、格差拡大といった影響をもたらしたと指摘。

その上で、20年のECBによるコマーシャルペーパー買い入れや22年9月に英国債市場が混乱した際のイングランド銀行による買い入れのように、「必要時には積極的に介入するが、より迅速に打ち切る」という「的を絞った」債券買い入れを提唱した。

ユーロ圏のような銀行ベースの経済では、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)などの措置が大きな支援となり、影響も小規模にとどまりさほど長期化しないということがこれまでの経験で示されていると説明した。

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