会場に足を運んで25年以上 イニシャルが大会名になったボランティアの話

大会の運営を支えるボランティアさんたち(撮影/高藪望)

◇国内男子◇~全英への道~ミズノオープン◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山)◇7461yd(パー72)◇

大会の運営に欠かせないボランティア。今週は1週間で延べ589人が集まった。77歳のT.Iさんは、他県から片道数時間をかけて会場へ。ゴルフの試合でボランティアを始めて25年以上になる。

原動力は「これからの選手を応援したい」。その思いから、自身のイニシャルを冠した下部ツアーを開催したのは2019年のことだった。21年まで3回行われた下部ABEMAツアー「TIチャレンジ in 東条の森」は、Iさんの融資で実現した大会だ。本名や職業は明かさないのがIさんの意向だが、ツアー側が敬意を表してイニシャルを大会名に入れた。

「ボランティアとして裏方を見てきて、選手が精いっぱいの生活の中で頑張っているのも見てきました」。男子ツアーでは試合数の減少が課題になっており、レギュラーツアーは今季24試合で、最多の46試合あった1983年から半減以下。下部ツアーはさらに少ない12試合で、1試合当たりの賞金総額は最高でも2000万円となっている。

今週も多くのボランティアさんが活躍(撮影/高藪望)

「試合数が少ないなか、こういう実績を作って次につなげてもらえたら。下部ツアーで見てきた選手が頑張ってくれているのはうれしい」とIさん。TIチャレンジの21年大会でアマチュア優勝を果たした河本力は、プロとして通算2勝を挙げた。20日には「全米オープン」日本地区の最終予選を突破して、自身初の海外メジャー行きを決めたばかり。「河本選手は海外志向が強いので、なにかきっかけをつかんでくれたら」と顔をほころばせた。

2017年にもツアーに寄付金を贈呈し、レストランで使える朝食券となって2年間にわたり選手に配られた。一方で、現役ボランティアとして大会を回るIさん自身は、節約しながらの“転戦”。いまは無理のない範囲で移動しているが、昔は陸路がある限りはほぼクルマ移動、高速料金が安い時間を狙って走らせたという。「最近はホテルも高いからね」と、一泊数千円のホテルを探してボランティアに参加している。年齢を感じさせない元気な笑顔で、今週も選手のスタートを見送った。

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