中国の研究者、氷表面の原子結晶構造の「観察」に成功

中国の研究者、氷表面の原子結晶構造の「観察」に成功

氷表面の原子結晶構造のイメージ図。(資料写真、北京=新華社配信)

 【新華社北京5月28日】中国の北京大学物理学院、北京懐柔総合性国家科学センター軽元素量子材料学際プラットフォームの研究チームがこのほど、独自開発した中国産qPlus走査型プローブ顕微鏡を使用して、氷表面の原子結晶構造の「観察」に世界で初めて成功し、零下153度で融解が始まるメカニズムも解明した。長年科学界を悩ませてきた氷表面の結晶構造、融解のタイミングとメカニズムの解明に向けた大きな進展となる研究成果は22日、国際学術誌「ネイチャー」に掲載された。

 同プラットフォームの田野(でん・や)特任研究員によると、チームはqPlus走査型プローブ顕微鏡を用いて、水素原子と化学結合を識別するイメージング技術を開発し、氷表面の水分子水素結合ネットワークの正確な識別と水素原子の正確な位置特定を実現した。観測により、氷表面の構造には、六方最密充填構造と立方最密充填構造の2種類が同時に存在し、接合し重なり合うことで、安定した結晶構造を形成していることが分かったという。

中国の研究者、氷表面の原子結晶構造の「観察」に成功

温度上昇に伴う氷表面予融化プロセスの原子分解能画像。(資料写真、北京=新華社配信)

 研究によって、氷表面の予融解メカニズムも明らかになった。氷表面は、零度以下で融解が始まることがよくあり、氷の予融解と呼ばれる。同プラットフォームの責任者、江穎(こう・えい)教授は、温度変化実験により、初めて原子レベルで氷表面の予融解プロセスを「観察」し、零下153度で融解が始まることを発見したと紹介し、氷表面の潤滑現象や雲の形成、氷河の融解プロセスなどの理解に非常に重要だと説明した。

 中国科学院院士(アカデミー会員)で同プラットフォーム理事長の王恩哥(おう・おんか)氏は、研究は氷表面の構造と予融解メカニズムに関する長年にわたる従来の認識を改め、氷の科学研究に新たな原子レベルの観点を開いたとの考えを示した。

 「ネイチャー」は同研究を特集記事として掲載した。複数の査読者は、研究チームによる氷表面の原子レベルのイメージングは重要な技術革新で、得られた分解能は氷表面のイメージングにおいて「空前のもの」であり、大気科学や材料科学などさまざまな分野に深い影響を与える可能性があると評した。(記者/魏夢佳)

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