『鬼滅の刃』水柱・冨岡義勇が残した「名言」の数々…「生殺与奪の権」は自戒の言葉?

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吾峠呼世晴氏の同名漫画を原作としたアニメ『鬼滅の刃』の新シリーズで、第4期となるアニメ『鬼滅の刃 柱稽古編』が大人気放送中だ。

「柱稽古編」では、太陽の光を克服した禰豆子を狙う鬼舞辻無惨に備え、鬼殺隊最高位の剣士である“柱”による最終決戦に向けた稽古の様子が描かれる。ここまでの鬼との戦いの中で目立った活躍シーンのなかった柱の登場シーンも多く、彼らの関係性や日常生活をかいま見ることができそうだ。

さて、『鬼滅の刃』においては、前述のように活躍シーンこそ少なくても、柱のメンバーの人気はものすごく高い。数百人いる隊士の中でもこの9人は別格の実力を持つというだけでもかっこいいのだが、彼らはその登場シーンの中で、作品全体を象徴するような名言も多く残している。そのあたりもファンの心をつかんでいるゆえんだろう。

そこで今回は、これまでアニメで放送された「刀鍛冶の里編」までの中から、水柱・冨岡義勇に焦点を当てて「柱の名言」を振り返りたい。

■「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

『鬼滅の刃』本編において、他のどの柱よりも早い段階で初登場したのが水柱・冨岡義勇だ。原作・アニメともに1話では、鬼に襲われ自身も鬼となってしまった妹の禰豆子を殺そうとする義勇に土下座して命乞いをする炭治郎に、厳しい顔つきで「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」という言葉を言い放った。

「柱稽古編」アニメ第二話の「水柱・冨岡義勇の痛み」を見れば、この言葉は義勇が自分自身の過去の不甲斐なさを悔い、自戒の意味を込めて発したのだということがわかる。

大切な人も守れず、無力でみじめな炭治郎の姿を見て、最終選別で何もできなかったのにただ生き残ってしまった自分の姿を思い出したのだろう。

状況をよく理解できないままにピンチになっている炭治郎の状況も相まって、義勇のこの言葉はことさら厳しい言葉のように感じるが、言葉の意味を見れば「自分自身の力で生きろ、立ち上がれ」と叱咤激励するようなセリフとなっている。

実際に、このあとは炭治郎を見逃し、鱗滝のもとへ向かうよう言ってくれたばかりか、柱合裁判では鱗滝とともに責任を取る形で炭治郎らの後見人となり、チャンスを与えてくれた。

■「怒れ 許せないという 強く純粋な怒りは 手足を動かすための 揺るぎない原動力になる」

上記の「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」から始まる、義勇にしては長文のセリフの後に、彼の心の中でのモノローグという形で続いたのが、「怒れ 許せないという 強く純粋な怒りは 手足を動かすための 揺るぎない原動力になる」という言葉だ。炭治郎を罵倒する一方で、本当は心の中ではこのように炭治郎に寄り添い応援していた。

このほかにも「泣くな 絶望するな そんなのは今することじゃない」「つらいだろう 叫び出したいだろう わかるよ」という優しい言葉を心の中で発している。

こんなふうに思っているのに、つい表に出たのが厳しいセリフというところが、義勇の不器用さを表していたのかもしれない。

■「俺が来るまで よく堪えた 後は任せろ」

次に炭治郎が義勇と出会ったのは那田蜘蛛山。下弦の伍・累を前に絶体絶命のピンチにおちいった炭治郎を救ったのが義勇で、そこでかけた言葉が「俺が来るまで よく堪えた 後は任せろ」だった。

このセリフを言った時は、無表情ながら初めて炭治郎を言葉で労ってくれたように思う。この時見せた「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型 凪」は義勇オリジナルの技。この技は義勇の間合いに入った術は全て凪ぐ・無になるというもので、累の最硬度の糸をたやすく斬った。静かだが心の内に情熱を秘める彼らしい技だった。

■「あれは確か二年前…」

次は名言ではなく、むしろ“迷言”かもしれない。那田蜘蛛山で禰豆子を殺そうとする蟲柱・胡蝶しのぶと炭治郎を引き離そうと、彼女をがんじがらめにしながら言った「あれは確か二年前…」というセリフだ。しのぶに「どういうつもりなんですか?」と問われたあとのセリフだが、急に話が飛んでいる。もちろん彼に悪気はないのだが、しのぶは「そんな所から長々と話されても困りますよ 嫌がらせでしょうか」とガチギレだ。

見た目はクールなイケメンなのに言葉が足りず、意思疎通を図る気がないとも見えるほどコミュニケーション能力に乏しい義勇は、たびたび人をイラつかせてしまう。

漫画やアニメの世界だから「作中屈指のイケメンで実力もある」という点で上位の人気を誇っているのかもしれないが、実際に義勇が友達や職場の人だったら……。確かに他の柱と同じような態度をとってしまうかもしれない。彼の今後がつい心配になってしまう。

裏を返せば、これまで人とコミュニケーションを育めるような環境にいなかった、そのための時間も全て鍛錬に費やしたということなのかもしれない。もしくは、最終選別での錆兎との別れをきっかけに、人間に対して心を閉ざし、わざわざ仲良くなるつもりなどなかったのだろう。

実際に「柱稽古編」のアニメで見せた錆兎との過去回想では、義勇は大笑いしながら純粋な笑顔を見せていた。そう考えると、彼をこんな性格にしてしまったのも、広い意味では鬼の仕業で、彼もまた鬼の犠牲者だと言えるのかもしれない。

まだまだ詳しい心情が知りたくなる水柱・冨岡義勇。無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編としばらく出番がなかった彼だからこそ、彼の熱い一面が見られるセリフは、柱稽古編以降の展開を楽しみに待つほかないようだ。

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