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いつの時代もなくならない相続トラブル。親/子ども/きょうだいと、死後のことを話すのは気まずい…。といった声は多いものですが、生前対策を怠ってとんでもないトラブルに巻き込まれる例が相次いでいます。本記事では実際の事例を紹介し、相続対策の基本を見ていきます。
父の遺産めぐり…長男と次男でバトル勃発
相続のシーンでは、故人の遺産をめぐりドロ沼の争いになることが少なくありません。「家族間の収入差」や「ビジネスの失敗」が絡むと、不満が爆発することも…。
例えば、以下のような事例です。自分のことではなくても、親戚や友人に起こった出来事として覚えのある方はいないでしょうか。
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《佐藤さん一家の事例》
次男のケンジさん(50歳/仮名)に怒りを爆発させたのは、長男のタカシさん(55歳/仮名)でした。事の発端は、父が亡くなってから1ヵ月後、遺言書を開封したことでした。
母は数年前に他界しており、相続人はタカシさんとケンジさんの2人だけ。遺されたのは自宅と約5,000万円の預貯金。遺言書には、「タカシに自宅を、ケンジに現金5,000万円を相続させる」と書かれていました。
遺言書の内容を見たタカシさんは、怒りを抑えられませんでした。
「なんでお前だけが5,000万円も相続するんだ! 自宅は維持費がかかるし、売るにしても手間がかかるんだぞ!」
タカシさんは、地方で小さな工場を経営しています。工場の設備更新や従業員の給料支払いに追われる日々で、余裕があるとはいえませんが、なんとか生計を立てていました。
一方、ケンジさんは数年前まで都会でITベンチャーを経営していましたが、事業が失敗して多額の借金を抱えていました。現在はアルバイトで生計を立てており、経済的には厳しい状況です。
「俺には借金があるんだ。父さんもそれを知っていたから、こういう遺言にしたんだろう」とケンジさんは反論しました。
「それにしても、不公平だろう。俺だって家族を養ってるんだぞ」とタカシさんは譲りません。
「父さんの意思を尊重しようよ。僕だってこのお金で何とか再起を図らなきゃならないんだ」とケンジさんは主張しましたが、タカシさんの怒りは収まりませんでした。
「お前のビジネス失敗はお前の責任だろう。俺が負担する義務はない!」
兄弟の話し合いは平行線をたどり、ついには激しい口論に発展しました。仲裁する者もおらず、話し合いは一向に進みませんでした。
「もういい。法的に争ってでも、納得できるようにする」とタカシさんは決意し、弁護士に相談することにしました。
どのようにおこなう?「遺留分侵害額請求権の行使」
この事例は、相続トラブルの典型例といえるでしょう。お金が絡むと揉めるのは避けられず、「兄弟間の収入格差」や「ビジネスの失敗」が争いの火種になります。たとえ仲がよかった兄弟でも、「自分が損している」と感じれば、亀裂が入るものです。
なお、あまりにも不公平に思える遺産分割については、遺留分侵害にあたる可能性もあります。遺留分侵害額請求については下記を参照ください。
“遺留分は、被相続人の子供や配偶者の割合は法定相続分の2分の1、被相続人の親の場合は法定相続分の3分の1です(民法1042条1項)。
(中略)
遺留分の主張をする際、法定相続分よりも多い相続を受ける当事者に対し、遺留分侵害額請求という意思を表示する必要があります。「遺留分侵害額請求権を行使します」と記載した手紙を送るわけです。証拠として残る形がよいので、内容証明郵便で送るのが望ましいでしょう。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与、または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないと、時効によって消滅しまうので注意が必要です。”(櫻井俊宏『「迷惑です」70歳で再婚した父が死去…後妻の暴挙に子は激怒』幻冬舎ゴールドオンライン連載)
不動産が遺産に含まれている場合は、その評価額も含めて遺留分を侵害しているかどうかが決まります。
遅かれ早かれ起こる「相続」。遺産争いとは結局「お金の取り合い」であり、その過程は苦しいものです。いつ何があっても問題ないように、事前の情報収集と適切なコミュニケーションが求められます。