『くる恋』朝日が隠し続けてきた嘘が明らかに 真実を吐露する神尾楓珠の演技が見せ場に

嘘は、いつか必ず明らかになるもの。たとえ善意から生まれた嘘であっても、真実を隠し続けることは難しい。ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』第8話(TBS系)では、記憶を失ったまこと(生見愛瑠)を取り巻く人々の嘘が徐々に明らかになっていく。彼らは、まことを守るために、あるいは自分の想いを伝えるために、真実を隠してきた。しかし、嘘はいつまでも隠し通すことはできない。第8話では、朝日(神尾楓珠)が隠し続けてきたとある真実が明らかになった。

誰かにつけられていた記憶が蘇ったまことは、恐怖のあまり公太郎(瀬戸康史)にしがみついてしまう。突然の出来事に戸惑いながらも、まことを優しく抱きしめる公太郎。朝までそばにいてくれたうえに「なんか……なくても連絡して」と前回から少し素直になった公太郎の言葉に、まことの心が和らぐのを感じる。そんな微笑ましいやり取りの後、まことの家から公太郎が出てくるところを朝日が目撃する。

ある日、朝日がまことを訪ねてリングショップにやってくる。朝日はまことに「みんなに優しい」と言われたが、本心は違った。「優しくしたいのは緒方だけだ」と真剣な表情で伝える朝日に、まことは戸惑いを隠せない。そして、「今度の休み、俺にもチャンスが欲しい」とまことをデートに誘う。しかしまことは記憶のない自分が恋をしていいのか思い悩み始める。リングの持ち主についての記憶が戻った時に、今思いを向けてくれている相手に向き合えるのか自信がないのだという。そんな中、律(宮世琉弥)からもランチのお誘いが。複雑な心情をよそにして男子たちからのアプローチは止まらない。

朝日とのデート当日。2人は朝日の希望でアートイベントに出かけ、楽しい時間を過ごしていた。ガラス落書きアートでも自分のシャツをかして優しさをみせた朝日に、まことは心を動かされる。しかし、イベントには意外な人物が。たまたま通りかかった(どう考えても怪しい)律との遭遇に、まことは不信感を覚えていた。モンドビバレッジにいた松永について何やら話したがっていた律の言葉も気になるところだ。

デートの終盤、「朝日といるの居心地よかった」と笑顔を見せるまこと。その笑顔に勇気を得た朝日は、ついに自分の気持ちに正直になる。「好きだ、緒方のこと。記憶失くす前からずっと」と告白する朝日。前よりもキラキラしている彼女のことを記憶を無くす前よりも好きになったという。「全部、俺だけの緒方だったらいいのに」と切ない思いを吐露する朝日に、まことは戸惑いを隠せない。朝日の真剣な眼差しと熱い想いに、まことの心は揺れ動く。しかし、記憶のない自分が恋をしていいのかという不安が、まことの中で渦巻いていた。

今回は朝日の嘘が明らかになり、真実を吐露する神尾楓珠の演技が見せ場となった。『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)や『いちばんすきな花』(フジテレビ系)などで存在感を見せ、好青年からやや屈折した役まで幅広く演じ分ける神尾。その演技力は制作陣の間でも高く評価されている。今回は、嘘を抱えてまことの隣にいる朝日の複雑な心情を巧みに捉え、視聴者の心を揺さぶった。

衝撃の告白は続く。「俺、本当は友達じゃない」と明かした朝日は、本当はただの同期だったと話す。先輩にミスを押し付けられて、周りから見てみぬふりをされた朝日に、寄り添ってくれたのがまことだったのだ。第1話で「緒方さん」から「緒方」に呼び方を改めたシーンの伏線回収がなされたことに、「まさかここで」と驚いた場面でもあった。

「これが俺の正直」と話す朝日は、まことが自分ではない“誰か”のことを思っていることに気づいていた。「騙して本当にごめん」と謝罪した朝日の、「じゃあ元気でね。緒方さん」の言葉はあまりにも切ない。

しかし過去の関係はどうであれ、朝日は今のまことにとって大切な友達だった。「気持ち悪いんだけど、緒方さんって呼ばれるの」とまことが言い出した時には少々ヒヤヒヤしたが、言いたいことを言い合える等身大の関係値がこの2人の良さなのだ。肌身離さずつけていたリングを外したまことは、今の自分の気持ちに正直になることを決意するのだった。

今回は律にも気になるシーンが多くあった。ダーツバーで一緒になった律と公太郎の間には、緊張感が漂う。「公太郎さん、まるでいい人みたいですね」という律の一言はなんとも意味深であったし、公太郎に対して何か情報をもっていそうな空気を漂わせている。

次週、全ての嘘が明らかになるという予告に、視聴者の期待も高まる。まことを取り巻く男性たちの思惑と、彼女自身の記憶の謎。“くるり”と覆る予測不能な後編の幕開けとともに、全ての嘘と秘密が解き明かされる時が、今まさに訪れようとしている。

(文=すなくじら)

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