『Destiny』カオリの事故は仕組まれていた? 真実に迫り“12年前”を取り戻した奏たち

野木浩一郎(仲村トオル)の自宅放火事件の真犯人が明らかになった『Destiny』(テレビ朝日系)第8話。

もちろん真犯人は、浩一郎と奏(石原さとみ)の接触を常に気にして、彼らを監視するかのように周辺をうろついていたスーツ姿の男。彼の正体は、元総理・東忠男(伊武雅刀)の秘書・秋葉洋二(川島潤哉)だった。

20年前、奏の父で検事の辻英介(佐々木蔵之介)を自殺に追い込んだ「環境エネルギー汚職事件」(以下、「環エネ事件」)で、英介によって収賄罪に問われたのが、東の息子の東正太郎議員(馬場徹)。そしてこの東議員を無罪に導いたのが浩一郎だった。浩一郎もどこまで真実を把握した上で、彼の弁護を引き受けたのだろうか。

いずれにせよわかったのは、長野の大学で出会った5人の大学生から青春も絆も一瞬にして奪い去ってしまったのは、この政治家たちの醜い保身だったのだ。英介と浩一郎の因縁の「環エネ事件」の真相に近づきすぎたカオリ(田中みな実)が命を落としたあの事故も、彼女自身の暴走だけでなく、もしかすると大きな力によって予め仕組まれたものだったのかもしれない。何と言っても相手は、奏の事務官として加地(曽田陵介)というスパイを送り込むような人間たちだ。

そして、もしかすると浩一郎は彼なりに自身の息子・真樹(亀梨和也)のことを守ろうとして、あえて突き放すようなことを言っているのかもしれない。真樹に失踪させるように仕向け、息子の身の安全を確保したのかもしれない。口酸っぱく「この件には首を突っ込むな」と掛け合おうとしないのは、自己保身のためではなく、真実を知ってしまうことで我が子に命の危険が及ぶのを阻止しようとしているようにも思えてくる。息子を心配していると素直に祐希(矢本悠馬)に打ち明けられたならよかったのに、何だか祐希を利用し操ろうとしているかのように見えるようなアプローチしかできなかったのかもしれない。

そして浩一郎は、カオリの痛ましい事故を「彼女の空回り」と一蹴し、真樹のことも「たまたま助手席に乗っていただけ」とする。それは、浩一郎自身がここまで事が大きく発展するとは予期できなかった、かつての自分自身について実際は相当後悔しているからではないだろうか。そう思わないと抱えきれないのかもしれない。それに、彼なりに真樹やその周囲について「幼稚で世間知らず」とすることで、彼ら自身が贖罪の意識に駆られなくてもいいように、という気持ちが込められているようにも思える。

そう思うと、何でも一人背追い込んで「俺、馬鹿なんで。馬鹿だけどそれだけが俺にとっては一番大事なことなんで」と取調室で話す真樹と、あまりに不器用な態度を崩せない浩一郎は、やっぱり親子で似た者同士だと言えるのかもしれない。

真樹が勘違いして祐希のことを庇うために放火の罪をかぶろうとしていたことがわかり、皮肉にも知美(宮澤エマ)夫婦と奏の間に学生時代を取り戻すかのような、12年前と繋がるような時間が流れ始める。軽口を叩き合って「ここにカオリがいたら」なんて言い合える未来が彼らにあってよかった。少し前までは記憶に蓋をし、腫れ物に触るかのように不自然に避け合っていた話題や存在を拒否することなく認め、受け入れることができた。

「環エネ事件」で疑惑を向けられていた東正太郎が次期総理の座に就こうとしている中、もうあと一歩で奏が掴もうとしている真実が、タイムリミットの迫る真樹の「生きていく意欲」であり「これから先生きていくための希望」になり得るのだろうか。
(文=佳香(かこ))

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