下宿をする大学生のベースになるのは「親の仕送り」。親のサポートで優雅な大学生生活を謳歌しているケースもあれば、困窮に瀕するケースも珍しくはありません。みていきましょう。
仕送り3万円減、アルバイトも増やせず…食費を削る毎日
――ありがたい、昨日は食事を我慢したので
ボランティア団体が行っている炊き出しの列に並ぶ、都内の大学に通う20歳の学生。空腹が満たされホッとしたのか、目にはうっすらと涙。この日は食料配布も行われ、袋に入った食料品も手に入れることができたと大喜び。
――レトルトのおかゆに、インスタントラーメン、袋詰めのロールパン……これで1週間は生きていける
――いまは耐えるしか……方法はなくて
上京してきて3年目。大学1~2年目は仕送りが8万円あり、1ヵ月の支出は家賃4.5万円、光熱費・通信費1.5万円、食費1.5万円……さらにアルバイトで月3万円ほどの収入があり、たまに友人と食事に行く程度の余裕もあったとか。また奨学金は「借金は怖い」という考えから、利用していないといいます。
株式会社ガクシーが一般の学生・保護者に対し行った『奨学金に関する実態調査2023年』によると、「奨学金に対する印象」は全体の半数が「借金なので怖い」と回答。さらに奨学金を受給していない学生では7割にものぼります。奨学金のネガティブな印象が、奨学金活用へのハードルになっているといいます。
そんな大学生活に変化があったのは、大学3年に進学するタイミング。祖父が介護施設に入居。その費用の一部を父が負担するようになると、かなり家計が厳しくなって……そんな状況を聞き、自ら「仕送り、減らしても大丈夫」と申し出たといいます。
――学費も払ってもらっているので
仕送りは「月8万円」→「月5万円」と3万円の減額。「その分、アルバイトを増やせばいい」と思っていたといいますが、大学3年に進学すると研究で忙しくなり、アルバイトを増やすという計画はすぐに崩れ去ったとか。むしろアルバイト代は「月3万円」→「月2万円弱」に。仕送りとアルバイト代で「月7万円」ほどの生活費。節約に節約を重ねて何とかやりくりするものの、あと削れるのは食費のみ……。
そのようなときに、炊き出しや食料提供を行っているボランティアの存在を知り、そこで食料を得る生活がスタートしたといいます。
――あと2年。大学を卒業すれば、こんな生活から抜け出せるはず
高度な教育を受けたいなら「自己責任」で…苦学生増加の背景
全国大学生活協同組合連合会『第59回学生生活実態調査』によると、下宿生の仕送りは平均7万0,120円。奨学金1万9,660円、アルバイト代が3万6,110円など、収入の合計は12万9,240円。それに対し、支出は平均12万7,750円。月に1.4万円ほどの余裕があります。平均値と比べると、前出の学生の困窮ぶりがわかるでしょう。
【大学生(下宿生)月の家計】
■収入
12万9,240円
(内訳)
小遣い:7万0,120円
奨学金:1万9,660円
アルバイト:3万6,110円
定職:420円
その他:2,940円
■支出
12万7,750円
(内訳)
食費:2万5,880円
住居費:5万4,130円
交通費:4,330円
教育娯楽費:1万2,840円
書籍費:1,500円
勉学費:1,260円
日常費:7,330円
通話通信料:3,190円
その他:2,290円
貯金・繰越:1万4,740円
また2023年、学生の暮らし向きは、「楽な方(大変楽な方と、楽な方の合計)」が63.7%に対し、「苦しい方(苦しい方と、大変苦しい方の合計)」が7.2%と、14人に1人の水準。割合にすると少なく感じますが、日本の大学学部生は250万人強といわれているので、数にすると18万人ほど。非常に多く感じられるのではないでしょうか。
これから冷房が必須の季節になりますが、ここにきて大手電力会社10社すべてで、家庭向けの電気料金が6月使用分から400円程度値上げとなるとされています。
――研究室に寝泊りする日が増えそう
支出を抑えるのに必死です。OECDによると、「政府支出に占める公的教育費(大学生)割合」はOECD平均で2.73%に対して、日本は1.56%。47ヵ国中43位です。さまざまなデータをみても、日本は公的な教育費を十分に支出しているか、疑問が残る結果です。
――高度な教育を受けるなら自己責任でどうぞ
そんなスタンスで進められる日本の教育。苦学生の存在は、今後ますます増えていきそうな予感です。
[参考資料]