有人か、セルフか、レジレスか?レジの進化が行き着く先とは

有人レジの業務改善として、ベルクはチェッカーがイスに座る試みを開始しました。サミットは、チェッカーがあえてお辞儀をしないスタイルに挑戦中です。従来のスタイルを覆すような試みが出てくる一方、業界ではセルフレジの導入が拡大中で、レジ業務は省人化の流れにあります。さらには、買い物途中に商品スキャンを済ませ、何なら決済も終わらせてしまえるレジレス化の仕組みもあります。レジの進化が行き着く先は、有人レジか、セルフレジか、レジレスか? その選択をリードするのは店でしょうか、顧客でしょうか。

業務の効率化と顧客ニーズに対応してレジの選択肢が広がる

「レジ」は大事な顧客接点だが、省人化の対象でもある

サミットは、レジのチェッカーが「いらっしゃいませ」といわず、お辞儀もしないスタイルに挑戦しています。その意図は、形式的な挨拶で済ませず、顧客とのコミュニケーションにより深い意味を持たせることにあるそうです。

来店客に「いらっしゃいませ」という代わりに、「おはようございます」や「こんにちは」と挨拶するそうです。一方的な呼びかけに終わる「いらっしゃいませ」ではなく、顧客が「おはよう」と返してくれれば、それがコミュニケーションになるというわけです。

サミットの服部哲也社長は、このことに言及した会見で「チェッカーは挨拶する際に、お客さまとアイコンタクトを取りながらお辞儀をするというマニュアルになっていましたが、それは人体の構造的に不可能。お辞儀をやめて、目を見て挨拶をするように変更したところ、雰囲気が良くなったとお客さまからいわれます」と語っていました。この試みはまだ途上とのこと。重要なのは単に「いらっしゃいませ」というかいわないかではなく、顧客とのコミュニケーションに魂を入れる的なことなので、確立までには時間を要することでしょう。

しかしながらサミットも含め、業界はセルフレジ化の過渡期にあります。以前は、チェッカーが素早くスキャンし、支払いだけセルフで行うセミセルフが業界のスタンダードになりかけましたが、それも完全セルフへと置き換わりつつあります。

セルフレジのメリットは、店側は一段と省人化できることでしょうし、顧客にとっては稼働レジが増えて待ち時間の短縮につながることです。有人レジは、そこにあれども稼働していないことが頻繁にあります。一方で、セルフレジだと店の手間は減るものの、顧客の作業負担は増えます。これでレジ待ちが短縮されなければ、顧客のストレスは増しそうです。

顧客のレジ要望は3つ巴の論争か?

店舗が繁盛すればセルフレジにもレジ待ちは発生

買い物途中に、携帯端末もしくはカート備え付けの機器で商品スキャンまで行えば、レジでの作業時間は大幅に短縮できます。その端末で決済まで済ませてしまえる仕組みもあり、そうなるとレジスペースそのものが不要のレジレスが実現します。

レジレスも顧客自ら商品をスキャンする手間はセルフレジと変わりませんが、買い物途中に済ませることで、レジで他人のスキャンを待つ辛抱はなくなります。他人の決済を待つ時間までなくなれば、レジ待ちは完全消滅です。

顧客にとってレジレスのメリットは大きいはずですが、セルフレジとレジレスを両方導入した場合、レジレスの利用率がセルフレジを上回るケースをまだ聞きません。ひとたびレジレスを体験すれば、もはや集中レジには戻れないと思うのですが……

ベルクが3月下旬にスマホ端末のレジレスの仕組み「スマベルク」を中止した際、Xには「今さらレジには並べない」という利用者の投稿が増えました。ベルク公式X(エックス、旧ツイッター)では大型アップデートに向けた一時的な処置とあり、ユーザーはその復活を待っているようです。

レジレス利用者はもはや後戻りできないと思う一方、商品満載のカゴを持って集中レジに向かう人たちは、「買い物途中にスキャンするなんて面倒くさいじゃない?」と考えます。レジに魂を縛られた人たちと、精算ニュータイプが分かりあうことは難しいかもしれません。これに現金派、キャッシュレス派の宗派闘争が入り混じり、また世代間の要求にも埋め難い溝がありそうです。

顧客にとって、有人レジ・セルフレジ・レジレスのどれを選ぶかは、実質的に3択ではないかもしれません。私はレジレスがなければ有人レジです。商品を選び終わった後からスキャンを始めるセルフレジの選択肢は、ほぼないです。反対に、自分のスマホにアプリを入れて、決済情報まで紐付けして商品スキャンなんてありえないと考える人もいます。

顧客から見た有人レジ、セルフレジ、レジレスの論争は3つ巴の様相で、容易に決着しそうにありません。だから先進的なチェーンはレジの3択を用意するわけですが、それでは投資もスペースも余計に必要になってしまいます。集約するなら、今はセルフレジが優勢ですが、今後はどうでしょうか。サポートが必要な高齢者の構成比は高まる一方ですし、レジレス派だって黙ってはいません。

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