山下智久がtimeleszに託したもの 改名後・新体制初楽曲「Anthem」を“意欲作”とするポイント

timeleszの第1弾リリースとなるEP『timelesz』が6月19日に発売される。グループとしては改名、さらに体制も変更になったこのタイミングでのリリースということで、大きな注目を集めている今作。心機一転のタイミングで発表される作品ということで、先行して公開されたリード曲「Anthem」に込められたメッセージも強い印象を受ける。実際、グループが様々な意欲をもって取り組み、制作された楽曲であることは想像に難くない。そこで、今作のどこに“意欲作”であることが表れているのか、「Anthem」をもとに考えてみたい。

まずは、アレンジ。「Anthem」は昨今の音楽シーンのトレンドを踏まえたような、低音が鋭く響くダンスチューンになっている。いわゆる“J-POP的”な歌そのものを聴かせる楽曲というよりは、ワールドワイドなアレンジを取り入れ、メロディや歌詞だけでなくビートもあわせて楽しむことできる、HIPHOP的構築になっている印象。Aメロ、Bメロからサビへの変化でも、構造における変化を必要以上には行わず、できるだけシンプルな展開が続いていく。かつサビのビートにはある種の余白が作られており、その余白も含めて全身で踊らせるようでもある。ビートに合わせて展開される佐藤勝利、菊池風磨、松島聡のそれぞれのボーカルもクールかつしなやかになっており、全体的に“キラキラ感”よりも、ある種の“マッチョ感”を覚えることになる。

ダンスも同様に、意欲を感じさせる。「Anthem」には大きく腕を動かす振りが随所で登場しており、結果、ダンスの中に躍動感を与えている。サビのビートメイクを考えても、こういった大きな振り付けが合う作りになっており、ボーカルのクールさに対して、ダンスは情熱的な力強さを持たせることができる。さらにポイントなのは、パワフルなダンスが映えるサウンドながらも、楽曲全体のBPMは抑えられていること。その結果、躍動感ある動きに力強さを覚えながらも、細かいところまで目が行きやすい作りになっている。指先の動きも丁寧にコントロールしながら、末端まで“魅せる”意識が洗練されているのが印象的だった。静と動のコントラストも明白になっており、「Anthem」の視覚的な面白さを豊かなものにしている。

今作への意欲をさらに体感するうえでさらに注目すべきポイントは、プロデュースを務めたことでも話題を集めた山下智久が手がけた歌詞をはじめとした、言葉のチョイスだ。山下曰く、「龍のように力強く舞い上がってほしい」という想いを込めて、timeleszの楽曲に携わったとのことで、歌詞の節々からもそれを感じることができる。「たちまちに世界を変えよう」や「そうさ獲物は逃がさん」など、闘志みなぎるフレーズを並べているのが、その証左。かつ、そういったエネルギーに満ちたフレーズを、メンバーが板について歌いこなしているのが良い。意図的にクールに歌ってみせたり、スタイリッシュに声の表情を調整している印象を受けるが、それこそが「Anthem」の歌詞をリアルなものにしている。

山下がtimeleszに託したいこと、それをtimeleszが受け止め、ここからシーンに投じたい想いが綺麗に交わった結果、「Anthem」の美しくて凛とした世界観が構築されているのだろう。さらに言えば、音においても、ダンスにおいても、歌詞・ボーカルにおいてもグループとしての新境地を提示しつつ、timeleszとしての今後のアンセムになりそうな存在感が出ている。今作を丁寧に聴いたうえで改めて思うのは、これまでの3人が描いてこなかった世界観を音楽の中で作り上げつつ、他のグループでは辿りつくことのなかった地平へ誘ってくれるのではないか? という予感をひしひし感じるということ。振り返れば、確かにtimeleszとしての活動を発表した時は、これまでのキャリアからの変化を想像するといろいろな感情が渦巻いた。しかし、「Anthem」をしっかりと聴いた今、“あの頃”も大事にしながら、きっと“ここから”もすごいことになるという予感が胸に溢れる。「Anthem」は、そういう感情を沸き立たせる楽曲であるように感じる。timeleszがどう飛躍していくのかが、楽しみで仕方がない。

(文=ロッキン・ライフの中の人)

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