「下手したら死んでた…!?」歴代『ジャンプ』作品で描かれた「過酷な修行」の数々

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敵との戦闘やスポーツなど、さまざまな形での「バトル」が描かれる少年漫画。王道のパターンとしては強敵とのバトルのあと、さらなる高みを目指すためにその作品らしさが現れる「修行シーン」が描かれることが多い。これらは総じて常人にはこなせないほど過酷であり、下手をすれば命を落としかねないほどのリスクを背負って、己を徹底的に鍛え上げていくのである。

今回は、そんな死のリスクすら伴う過酷な修行の数々を『週刊少年ジャンプ』(集英社)作品からいくつか紹介しようと思う。

■広大な大地にて行われた死の行進『アイシールド21』

まずは、劇的な展開で胸が熱くなる原作:稲垣理一郎さん、作画:村田雄介さんによるアメフト漫画『アイシールド21』の「デス・マーチ」を紹介しよう。

アメリカの強豪・NASAエイリアンズに敗退した小早川セナら泥門デビルバッツの面々は、当初の契約通り日本を即日退去し、アメリカの地にて地獄の強化プログラム「デス・マーチ」をおこなうことになる。その実態は、テキサス州からネバダ州のラスベガスまでのおよそ2000kmを、期間40日以内にその足で横断するという驚異的な内容だった。

各ポジションごとにその行進の方法は異なり、ラインマンは大型トラックを押しながら、クォーターバックとレシーバーはパスコースを想定しながら、ランニングバックは特定の小石を蹴りながら進まなければならない。

テキサス州やネバダ州があるアメリカ南西部は、夏は気温が35度に達することもある。ましてセナたちが走るコース、とくにテキサス州では竜巻が頻発している。熱中症や竜巻の脅威があるなかで、砂漠を行進するのは、いくら根性をもってしても命を落としかねないだろう。

見事脱落者を出すことなく完走してみせた泥門デビルバッツ一同は、「デス・マーチ」の甲斐あって秋季大会を破竹の勢いで駆け上がるものの、やはり現実的には推奨されるべきではない過酷な修行の一つではないだろうか。

■世界観にマッチしたなんでもありの修行法『ドラゴンボール』

世界的な人気を誇る鳥山明さんによるバトル漫画『ドラゴンボール』においては、過酷な修行の様子が幾度となく描かれていた。

悟空が幼少のころにおこなった亀仙流の修行は、早朝から20キロの甲羅を背負いながらの牛乳配達からはじまる。激流の中を進んだり恐竜に追いかけられたりと過酷なランニングをこなしたあとは、農業や工事などの肉体労働に従事。そして疲労困憊のなか、サメのいる湖を往復したり、無数のハチをひたすら避け続けるなど、とにかくてんこ盛りな一日を8カ月間もこなすという地獄のような修行だったのだ。

ほかにも、1年後のサイヤ人の襲来に備えてピッコロが4歳の悟飯に課した修行は、6カ月間をただ一人で生き抜くというものだった。ピッコロが悟飯の潜在能力を信じていたからこその内容だったが、獰猛な獣が住まう地においてほったらかしにされるなど、大人でも命にかかわるだろう。

作中ではまだまだ過酷な修行が描かれており、雲の上まで高くそびえるカリン塔を素手でよじ登ったり、300倍の重力室に籠って修行をするなど、規格外の過酷な修行が多く見られた。最悪の場合、ドラゴンボールで復活はできるとはいえ……本作ならではの修行方法であることは間違いない。

■長男としての執念で乗り越えた地獄の修行『鬼滅の刃』

最後に、現在アニメにて「柱稽古編」が絶賛放送中の、吾峠呼世晴さんの『鬼滅の刃』から、序盤で見られた修行を紹介しよう。

炭治郎は鬼になった妹・禰豆子を人間に戻すべく剣術を磨くため、鱗滝左近次を頼ることとなる。俊足の鱗滝を必死で追いかけたあと、へとへとのまま霧深い夜の山に連れていかれた炭治郎は、夜明けまでに麓の家に戻るよう告げられ一人取り残されてしまうのだ。

道中には多彩な罠が仕掛けられており、勢いよく飛んでくる小石が直撃したかと思えば落とし穴にはまり、這い上がったかと思えば背後から丸太が激突してくる。さらに山の酸素の薄さからまともに呼吸するのも一苦労で、片時も休むことができない。

漫画ではこのあとボロボロの炭治郎が家に到着する姿が描かれるのだが、アニメ版ではその過酷さがより色濃く描かれていた。

山中を駆け回る炭治郎めがけて四方八方から飛んでくる丸太は、そのまま地面に突き刺さるほどの威力で、人間に当たれば即死は免れないだろう。さらに弾丸のように飛んでくる小石や、しなる竹によって激しく地面に叩きつけられたりなど、常人なら致命傷になりかねない罠ばかりだったのである。

正式に修行を受けることになってからも罠だらけの山から下りる修行はおこなわれ、新たに登場した刃付きの罠は、一瞬の気の緩みが死に繋がりかねない内容となっていた。

鱗滝は過去に鬼殺隊最終選別で弟子を失っていたことから炭治郎を送り出すのをためらっていたが、下手をすれば修行の時点で炭治郎を失いかねないほど、非常に過酷な修行であった。

『ジャンプ』作品で描かれる、死のリスクが伴う過酷な修行の数々。漫画だからといえばもちろんそれまでだが、その世界観に自身を重ねてその過酷さに悶えながら読むというのも、物語を楽しむための一つの読み方であるように思う。

その先にある“強さ”を求めて奮闘する作品ごとの修行シーンを、好きなキャラクターたちに寄り添うようにともに苦しみながら楽しんでいこうではないか。

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