【社説】ドラフラ日本一 広島の新たな「顔」になった

 バスケットボール男子のBリーグ1部(B1)で、広島ドラゴンフライズが初の頂点に立った。きのう、プレーオフの日本生命チャンピオンシップ(CS)決勝第3戦で琉球を破り、優勝を決めた。

 リーグ終盤の5月上旬から広島では市民の日常会話でドラフラの快進撃が話題に上ることが増えていた。試合のスピード感や最後まで諦めぬ姿勢に心奪われた人も多かろう。日本一を勝ち取った選手とスタッフを誇らしく思う。

 ドラフラは組織的な粘り強い守備でロースコアに持ち込み、終盤勝負で競り勝ってきた。昨季から12選手中10選手が残り、若手も成長した。9年間チームをけん引してきた朝山正悟選手の引退表明は、「過去最高の成績で花道を飾ろう」とチームを団結させたに違いない。

 CSは三つあるリーグ各地区の2位までと、それ以外の勝率上位2枠(ワイルドカード)の8チームで争う。ワイルドカード枠のドラフラはブースターと呼ぶファンと「下克上」を合言葉に戦った。

 準々決勝、準決勝で格上チームを相次ぎ倒し、波に乗った。昨季覇者の琉球と争った決勝は先勝を許したが、第2戦で粘り強さを取り戻しタイに。第3戦も気迫みなぎるプレーで勝利を手繰り寄せた。

 クラブ創設10周年を悲願の優勝で飾った。当初、経営は綱渡りが続き、2016年のリーグ発足時はB2スタートを余儀なくされた。英会話教室を展開するNOVAホールディングスがオーナーになると補強が進み、20年にB1昇格。昨季、CSに初進出した。

 今季は26年からの新トップリーグ「Bリーグ・プレミア」参入に向け、正念場だった。ホームゲームの平均入場者数4千人以上をクリアする必要があったからだ。チームの奮闘や営業努力で4618人を達成したが、競技の垣根を越えた協力も見逃せまい。

 広島東洋カープはコラボゲームを増やすなど集客を後押しした。カープには創設時の経営危機や球界再編騒動を地域に支えられ乗り切った経験がある。きのうはサンフレッチェ広島が本拠地のエディオンピースウイング広島でパブリックビューイングを実施。今後の連携の広がりを期待したい。地元チームがプロ3リーグ制覇の快挙を達成した都道府県は千葉と広島だけだ。

 ドラフラが広島の「顔」の一つになったのは間違いない。新リーグ参入に欠かせぬアリーナ整備が次の課題になろう。広島市の松井一実市長は「官民一体でやりたい」とマツダスタジアムなどの建設を引き合いに出した。大型コンサート開催につながると、プロモーターなどでつくる地元団体も力を合わせる構えだ。機運をさらに高め、まちづくりの観点も踏まえて実現を目指したい。

 Bリーグはユース組織の整備など課題は多いが、伸びしろも大きい。私たちも、ドラフラをさらに育てる心意気で応援しよう。

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