【5月29日付編集日記】15分の有名人

 「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」。米ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの有名な言葉だ。彼が思い描いた未来かどうかは分からないが、当たり前の現実になっている

 ▼動画投稿サイトやSNSなどを使い、誰でも自分の存在を世界中に知らしめることのできる世の中だ。どこかに出向く必要もなく、部屋に居ながらにしてメッセージを発信し、共感が得られればあっという間に有名人になれる

 ▼これが高じ、あえて批判される言動を拡散して世間の注目を集めようとする人が後を絶たない。飲食店などで常識外れの行動をする「迷惑系」、虚実不明の情報でフォロワー数を伸ばす「暴露系」など、広告収入が目的のケースもある

 ▼衆院補欠選挙を巡り、政治団体の代表らが公選法違反(自由妨害)の疑いで逮捕された事件は、落選運動をビジネスにする狙いがあったとみられている。動画を駆使した悪質な行為は、激しくなっていくばかりだ

 ▼ひとたびネット上で名前が売れれば、15分と言わず有名人でいられる時代。その間、不特定多数への中傷が続くと、被った傷が癒えるのにどれほど時間がかかるか。少し考えれば分かるはずなのに、なぜ繰り返される。

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