「アク抜き不要」と表示されたこんにゃく 下ゆでは必要? おいしく食べるコツを栄養士が解説

ヘルシーなこんにゃく(写真はイメージ)【写真:写真AC】

炒め物や煮物など、さまざまな料理に用いられるこんにゃく。どちらかというと脇役的な存在のため、普段はあまり気にしないことが多いかもしれませんが、下ごしらえや保存の仕方を工夫すれば、よりおいしくヘルシーにいただけるそう。5月29日のこんにゃくの日にちなみ、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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アク抜きは必須? おいしく食べるコツ

こんにゃくを調理する際に独特の生臭さやえぐみを感じることがあるでしょう。アクと呼ばれるこれらの正体は、こんにゃくの原料となるこんにゃく芋に含まれるシュウ酸カルシウムと、凝固剤として使われる水酸化カルシウムです。アクを抜かないまま調理してしまうと、臭いやえぐみが残ってしまします。

こんにゃくはしっかりと手順を踏んでアク抜きを行うことで、さまざまな料理に使いやすくなります。ひと手間でもぜひ行いましょう。アク抜き不要とパッケージに書かれているものでも、臭いが気になる場合はアク抜きしてから調理すると良いですよ。手順を紹介します。

○こんにゃくの下ゆで
1. こんにゃくを袋から出して、表面についたぬめりや臭いを流水で洗う
2. 料理に合わせた大きさに切ったら、ボウルに入れて、塩小さじ1/2(こんにゃく1枚に対し)をふりかけて、軽くもみこむ
3. 鍋に湯を沸かし、2のこんにゃくを洗わずにそのまま加えて下ゆでする。ゆですぎないように注意。時間は2~3分ほどが目安
4. ザルにあげて冷ます

鍋と火、塩を使わない手軽な方法として、電子レンジを使ってアク抜きする方法もあります。深めの耐熱容器に、カットしたこんにゃくを入れてラップをふんわりかけ、2分(600ワット)ほど加熱して、ザルにあげます。

アク抜きしたこんにゃくを煮たり、炒めたりするなどして料理に活用しましょう。臭いやえぐみが取れ、余分な水分が抜けることで、味が染み込み、おいしい仕上がりになります。

こんにゃくを最初に食べるとダイエットに効果あり?

こんにゃくはダイエット向きの食材といわれていますが、これは食物繊維を主成分とするため、低カロリーであることが大きな理由です。こんにゃくに含まれる食物繊維のグルコマンナンは、腸内で水分を吸って膨張し、腸を刺激するため、便の排出を促すことや便の量を増やすことに期待されています。

余談ですが、江戸時代には「砂払い」といって、体の中から不要なものを排出するために、こんにゃくを定期的に食べる習慣があったようです。こんにゃくに含まれる食物繊維の働きを、昔の人は経験から知っていたのでしょう。

食物繊維が豊富なことから、こんにゃくは食事の最初に食べると、満腹感を得やすく、食べすぎを防ぐことができます。ただし、こんにゃくは決して栄養価の高い食品とは言えません。ダイエット中でも、栄養バランス良い食事を心がけましょう。

また整腸作用を持つ食物繊維であっても摂りすぎは逆効果になります。下痢や便秘になったり、ひどい場合は腸閉塞を起こしたりする可能性が。1日に食べる量は、100グラム程度、板こんにゃくであれば1/2~1/3枚程度にとどめておきましょう。適量をバランス良く日々いただくのが、賢い食べ方です。

実は常温もOK? こんにゃくの保存

買ってきたこんにゃくの保存は、どうしていますか? 開封前であれば、直射日光と高温多湿を避けた場所であれば、袋のまま長期で常温保存ができるものが多いので、パッケージの裏を確認しましょう。

ただし蒸し暑い夏の時季は、開封前でも袋ごと冷蔵庫での保存をおすすめします。冷蔵庫で保存する際は、直接冷気が当たるような場所は、こんにゃくが凍る原因になるので避けてください。こんにゃくはいったん凍ってしまうと、解凍した際に中の水分が出てしまい、スポンジ状でパサパサになったり、かたくなったりと食感が別物になってしまいます。

開封後のこんにゃくは、冷蔵庫保存が鉄則です。一度に使いきれない場合は、一緒に入っている水(封入水)は捨てないでください。封入水は殺菌作用を持つアルカリ性の液体です。使い切れなかったこんにゃくを容器に入れたら、封入水で浸し、ラップをかけて冷蔵庫へ。もし封入水を捨ててしまった場合は、水道水で代用します。いずれにしても開封後のこんにゃくは傷みやすいので早めに使い切りましょう。

古くから日本の食卓で好まれてきたこんにゃく。下ゆでや保存のコツを押さえて、よりおいしくヘルシーにいただきたいですね。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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