竹田市の名物がまた一つ…「はら太餅」の生長堂が閉店へ 後継者不在や原材料高騰で【大分県】

はら太餅を手がけてきた生長堂の進藤道昭さん(左)と千恵子さん夫婦=竹田市竹田町
生長堂のはら太餅

 【竹田】竹田市の名物「はら太(ふと)餅」を製造・販売する和菓子店「生長堂」(市内竹田町)が近く閉店する。後継者の不在などが理由。店主の進藤道昭さん(76)は「続けてほしいという声もあるが、やむを得ない。お客様には感謝しかない。長い間のご愛顧ありがとうございました」と話した。

 進藤さんによると、はら太餅は主に竹田、直入地域で作られてきた。丸く平らで皮に透明感があり、たっぷりのあんこが透けて見え、優しい甘さが特徴。

 名の由来は諸説ある。江戸時代、狩りに出かけた岡藩主の中川公が家来とはぐれて空腹で難儀し、一軒家で娘からもらった餅を「はら太餅」と名付けた―という言い伝えもある。昔から県民や観光客らに愛されてきた。

 生長堂は長年、はら太餅を作り続けてきた。20年以上前には「はら太」を中心に1日約6千個を実演販売したこともあるという。大分市の秋の恒例行事だった「大分生活文化展」にもたびたび出店し、好評を博した。

 田植えの休憩中に食べるおやつとして人気があり、進藤さんは少年時代に配達を手伝ったのを覚えている。

 現在は工場(市内竹田)で菓子の製造を手がける進藤さんと、店頭に立つ妻千恵子さん(75)の2人で切り盛り。くるみもちや大納言、甘酒万十(まんじゅう)などが人気だった。後継者がいないことに加え、原材料価格の高騰なども閉店の原因になった。

 原材料がなくなり次第、生産を終了する予定。進藤さん夫婦は「市民、県民がよく訪れてくれた。古里の味として愛されてきたことを肌で感じています」と感謝した。

 竹田市の城下町では、1月末に手作りサンドイッチが名物のコンビニエンスストア「Yショップ今勢屋」が店を閉じ、銘菓「荒城の月」などを手がける和菓子店「川口自由堂」が今月下旬にのれんを下ろすなど店じまいが相次いでいる。

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