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阿蘇市の阿蘇火山博物館で24年間、館長を務めた池辺伸一郎さん(67)=合志市=が30日付で退任する。在任中は熊本地震、新型コロナウイルス禍などの苦境も経験した。退任を前に学芸員時代も含めて40年勤務した、博物館への思いなどを聞いた。(小田喜一)
-館長として心がけていたことは何ですか。
「自分たちで調査研究した成果も含め、火山の専門的な知識を来館者に分かりやすく伝えることを大切にしてきた。近年は博物館として『日本応用地質学会表彰』や、『日本火山学会普及啓発賞』などの賞もいただき、光栄に思う」
─在任中には熊本地震も発生しました。
「博物館も被害を受けて休館が続いた。1日でも早い再開を目指し、地震から約5カ月後に1階フロアのみオープンした。職員だけでの運営は厳しく、地元ガイドが観光客の案内や館内整備を手伝ってくれ、とても助かった。また、地震被害を題材にしたツアーなども実施し、来館者の防災意識向上にも努めた」
─2014年の阿蘇地域の世界ジオパーク認定時には、地元自治体などでつくる推進協議会の事務局長でした。
「ユネスコ(国連教育科学文化機関)に向け火山との共生を訴える際、阿蘇と他の火山に近い地域との違いを出すことが大変だった。カルデラという特異な地形や、草原由来の特有の文化などをアピールしたことが認定につながった」
「一昨年には再認定も受けた。今後、阿蘇世界ジオパークをさらに盛り上げていくには、地元住民が阿蘇の魅力を再発見できる仕組みづくりが必要だと思う」
-今後の博物館への思いを聞かせてください。
「旅行形態は団体から個人に変わり、近年、来館者数は減少傾向にある。だからといって楽しさだけをPRして集客する施設になれば、博物館としての資料の収集保存、調査研究、教育普及の3本柱を見失う。収益を維持しながらも、阿蘇でしかできない体験や学びを提供できる博物館であり続けてほしい」