杉田雷麟&寛一郎 マタギの神事「ケボカイの儀式」を行う姿 「プロミスト・ランド」場面写真

2024年6月29日より劇場公開される、歴史小説作家・飯嶋和一のデビュー作で、第40回小説現代新人賞を受賞した同名小説の映画化作「プロミスト・ランド」から、新たな場面写真が公開された。

場面写真では、集中した表情で銃を構える礼次郎(寛一郎)、突如目の前に現れた熊に驚く信行(杉田雷麟)、そしてマタギの神事である「ケボカイの儀式」を信行と礼二郎が執り行う様子が切り取られている。

「ケボカイの儀式」は、獲った熊を雪の上に横たえ、クロモジの枝で尾の方からなで上げ、深々とお辞儀をする二人。熊の肉をいただき、その魂を山の神の元へとお返しするという、この土地のマタギにとって大切な儀式。原作者の飯嶋和一氏は、「ケボカイは、マタギが獲物を解体する時に行なわれる。ほふった熊の頭部を川下に向けて置き、剥いだ毛皮を数人が持ち上げて、持ったまま頭の皮を尻に、臀部の皮を頭部へと回し、体の肉に覆い被せる。熊の霊が天にのぼり、再び獲物となって現われるのを山の神々に祈念する儀礼である」「この映画には、明治時代以降、我々が進んで失ってきた自然への畏敬と共生への願いがこめられている」とコメントを寄せている。

「プロミスト・ランド」の舞台は春の東北、マタギの伝統を受け継ぐ山間の町。高校卒業後、家業の鶏舎を継いだ20歳の信行(杉田雷麟)は、この土地の閉鎖的な暮らしに嫌気が差しながらも、流されるままに日々を送っていた。そんなある日、役所から今年の熊狩りを禁止する通達が届く。違反すれば密猟とみなされ、マタギとして生きる道を閉ざされてしまう。町のマタギ衆が落胆しながらも決定に従うなか、信行の兄貴分の礼二郎(寛一郎)だけは、かたくなに拒み続ける。礼二郎から呼び出された信行は、2人だけで熊狩りに挑む秘密の計画を打ち明けられる。マタギの誇りを貫くため、他を犠牲にしてきた若者と、古いしきたりや大人たちに反発しながらも、自分の生き方を見つけられずにもがく若者が、それぞれの思いを果たすため、2人きりで禁じられた熊狩りに挑む。

脚本・監督を務めるのは、本作の舞台となる山形県庄内地方のマタギ衆に密着したドキュメンタリー「MATAGI」に続く本作で、長編劇映画デビューを飾った飯島将史。「青春ジャック~止められるか、俺たちを2~」「福田村事件」などの杉田雷麟と、「せかいのおきく」「首」「身代わり忠臣蔵」の寛一郎が主演する。

一足早く本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■安島薮太(漫画家 「クマ撃ちの女」作者)
若い猟師が無様で不格好にノタノタと、延々と続く木立の中を淡々と歩く。
そこにフワッと息を飲むような美しい風景が浮かび上がる。
名残惜しいが先に進む。
寒空の下獲物を待つ。ただ静かに待ち続ける。しんどく、退屈だ。
ある瞬間獲物が目前に現れる。
今までの退屈が嘘のように興奮が体にみなぎり始める。
この感じ…
「この映画は現実だ!」そう思いました。
生々しいにも程がある。

■石川直樹(写真家)
狩猟でも登山でも、一度山に入るとその大半は黙々とした歩行である。
でも、そのとき人は、ずっと静かな熱を帯びている。
本作にはそんな緊張感を伴う静かな炎が途切れることなく漂っていた。

■河﨑秋子(作家 第170回直木賞受賞「ともぐい」)
禁猟令が出ていても、年長者に咎められても、若者二人が敢えて『熊を撃(ぶ)つ』。
雪山を歩む足音や勢子としての咆哮、そして無音の眼差しによってこそ雄弁に語る姿に圧倒された。
彼らが得たものは人間の秤では量ることができず、きっと熊の血の色をしている。

■丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
山を守り自然と付き合う術を知る人々。彼らの存在はむしろ自然の側に近い。
だからこそ生まれる葛藤や苦悩は我々がどのように自然と付き合っていくべきかを否応なく考えさせる。

■千松信也(猟師・作家)
猟というと獲物と直接向き合う緊迫したシーンが想起されがちだが、実際はひたすら獲物を求め山を歩き、痕跡を探り、思索・葛藤することに99%の時間が費やされる。
この映画ではそんな“当たり前”の営みが懇切丁寧に描かれている。
猟師の立場としては、とてもしっくりくる作品だった。

■永沢碧衣(絵画作家)
大地全てを包み込んだ白雪を、マタギは慎重に踏みしめる。ひとつの足音が、遠くのどこかで雪崩を引き起こさないように。上手に、密やかに、生き残り続ける。
だが、つい願ってしまうのだ。焦燥感に駆られた彼らが飲み込んだ、澄みきった青さや熱く滴る赤との出会い。
山からの授かりものとの大切な繋がりを、無かったことにしたくはないと。

■飯嶋和一(原作者)
山岳の神々に捧げられた映像詩
飯島将史監督の肉声は、殊に原作にはない「ケボカイ」の儀式から伝わった。ケボカイは、マタギが獲物を解体する時に行なわれる。ほふった熊の頭部を川下に向けて置き、剥いだ毛皮を数人が持ち上げて、持ったまま頭の皮を尻に、臀部の皮を頭部へと回し、体の肉に覆い被せる。熊の霊が天にのぼり、再び獲物となって現われるのを山の神々に祈念する儀礼である。マタギにとって深山の狩場は霊場であり、樹木や獲物となる鳥獣にも神が宿る。この映画には、明治時代以降、我々が進んで失ってきた自然への畏敬と共生への願いがこめられている。

【作品情報】
プロミスト・ランド
2024年6月29日(土)より ユーロスペースほか全国順次公開
配給:マジックアワー/リトルモア
©︎飯嶋和一/小学館/FANTASIA

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