《リポート》身近な校内に居場所を  支援教室、小中8校設置 不登校に寄り添い 茨城・守谷市

個別ブースでオンライン授業も受けられる愛宕中の校内フリースペース=守谷市本町

不登校対策として茨城県守谷市が始めた支援教室「校内フリースペース」が3年目を迎えた。2022年度に県内に先駆けて市内の中学校全4校に設置し、23年度は小学校4校にも拡大し、体制を強化した。不登校解消の効果も見られるが、市は早期の学校復帰に固執せず、子どもに寄り添った対応で家以外の居場所づくりを目指す。

▽通いやすく

同様の支援教室は他の地域では「校内教育支援センター」「校内フリースクール」とも呼ばれ、国も設置を促している。

同市は22年度、市立中学校全4校で空き教室を活用したフリースペースを設置し、教員免許を持つ支援員を各1人配置した。23年度からは小学校4校にも増やした。

同市の小中学校で年間30日以上欠席した児童生徒の割合は、22年度で小学校が2.5%(全国平均1.7%)、中学校が6.5%(同6.0%)と全国平均を上回っている。

もともとは市総合教育支援センターで不登校の児童生徒が通う適応指導教室を開いてきたが、遠方の子どもたちは保護者の送迎が必要で利用しづらかった。

身近な場所にある学校にきめ細かい体制をつくろうと、フリースペースの設置に踏み切った。学習や登校時間、過ごし方などは児童生徒の意思を尊重する。フリースペース登校は出席扱いになる。

▽オンライン授業

市立愛宕中は正面玄関から近くの階段を2階まで上ると、目の前がフリースペース。周囲の視線が気にならないよう動線に配慮している。

四つある個別スペースの1室では、2年生の女子生徒(14)がタブレット端末で家庭科のオンライン授業を受け、裁縫に取り組んだ。モニターを通じて教員が生徒に声をかける。

女子生徒は約1年前からフリースペースに週2、3日ほど通う。「ここなら数人しかいないから、自分のペースでできるのがいい。登下校時間もずらせるので、他の人と会わず、自分にとってよい」と話す。この日、女子生徒は給食を取って下校した。

▽自由に過ごす

同校のフリースペースは7人が在籍する。支援員の女性(63)は「生徒の負担にならないよう『あれをしよう』『これをしよう』とは指示しない」と接し方に心を配る。過ごし方は自由で、折り紙や読書、疲れていれば休憩しても構わない。片岡正美校長(59)も「安心して過ごせる温かい場所にしたい。家以外の居場所として社会とのつながりを持たせたい」と位置付ける。

市教委によると、フリースペースの利用人数は各校1日平均で小学校は3、4人、中学校は10人程度。不登校を解消した児童生徒は数人いるという。将来的には市立小全9校にも拡大したいという。

市教委担当者は支援の在り方について「早期の復帰は強調せず、子どもの特性に合わせた対応をしたい」と子どもに寄り添った姿勢を心がける。

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