全身タイツに顔を描いた“女装”男 出現に「怖すぎ」SNSで困惑も…“見た目”を理由に警察はどこまで動ける?

警察が職務質問を行う“基準”とは(Haru photography / PIXTA)

最近、全身タイツの上に顔を描き、女装姿で街中や電車内などに現れる“不審者”の目撃情報がネット上に度々寄せられている。

4月に話題となったX(旧Twitter)上の投稿(現在は非公開)では「女性がたくさんいる所にわざわざ来て座ってた」「すぐ後には頭が真っ白で通報できなかったからとりあえず新宿警察に電話で相談してパトロールの強化お願いした」とつづられていた。

ネット上では「怖すぎ」の声も「不審者とまで言ってしまっていいのか…」

この目撃情報に対し、ネット上では「怖すぎ」「もう何回も見てる。その度にびっくりするしこわい」「みんな即通報してほしい」といった声があがっている一方、「ご病気で肌を隠されてるのかと勝手に思ってた」「外見を理由に晒すのはどうなんやろ」といった声も見受けられた。

確かに、ネット上の目撃情報を見ていくと、露出行為や痴漢行為といった“明確”な犯罪行為があったと断定するのは難しいかもしれない。

全国の「不審者の出没情報」を収集・配信している「日本不審者情報センター」代表の佐藤裕一氏によれば、「確かに全身タイツを着た不審者の情報というのはまれにある」としつつ、同センターでは「収集した情報でも、内容が服装だけというものはあまり配信していない」という。

「ちゃんと服を着たうえでその格好でいるだけであれば、確かに見た人は不安に感じるかもしれませんが、不審者とまで言ってしまっていいのかというと…という部分があります。

また、全身タイツに顔を描いていることが原因だとしたら、サングラスをかけていた場合はどうなのかとか、目出し帽やプロレスの覆面だったらいいのかなど、いろいろと考えてしまいます。

ただ、目立つ服装にプラスして、声かけや露出のようなことをしている場合には、不審者情報として配信を行っています」(佐藤氏)

それでも、こうした服装の人を見てびっくりする、怖いと思う人がいるのも、理解できなくはない。

110番通報があれば「100%現場に臨場」も、職務質問の必要性は…

ではもし、他人の“見た目”に恐怖心を抱いた人が警察に110番通報や相談をした場合、どのように対処してくれるのだろうか。元警察官のY氏はこう話す。

「警察官が職務質問を行う基準には『異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者』という規程(警察官職務執行法第2条1項)があります。

これに当てはまるのは、たとえば公然わいせつに近い格好をしている人や、挙動がおかしい人です。

ただ、実際に声をかけるかは警察官の個々の判断にゆだねられているので、今回のようなちょっとコスプレめいた格好の場合だと、私個人としては、そこまで犯罪性があるようには感じられません」

警察が積極的に職務質問しない案件でも、通報や相談が寄せられた場合にはしかるべき対応がとられるという。

「もし110番通報ではなく“相談”などのかたちで警察に“不審者情報”が届けられた場合でも、警察署内で周知するなど、内々では警戒の意識が共有されます。

一方で110番通報が入った場合には、100%現場に臨場(現場に赴くこと)します。そして当該の“不審者”がまだ周囲にいないかを確認したのちに、現場周辺をパトロール強化の対象にするといった対応をとります。

私はパトカーに乗る機会が多かったのですが、小学校に近いところなどでは“不審者”に関する情報がバンバンやってきますので、下校時間に合わせて周辺を警戒するということは実際にやっていました」(Y氏)

全身タイツ女装の人物のような“不審者”に遭遇した時に、何事もなければ良いのだが、不安が残るようであれば警察に相談し、もし犯罪が疑われるような行為があれば通報を検討するべきだろう。

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