海外は入域料徴収、京都市はどうする オーバーツーリズム解消へ「踏み込んだ政策必要」の声も

京都市のオーバーツーリズム対策について協議するプロジェクトチームの初会合(中京区・市消防局庁舎)

 京都市内のオーバーツーリズム対策を練る「市民生活と観光の調和推進プロジェクトチーム」(PT)の初会合が26日、中京区の市消防局庁舎で開かれ、課題解決に向けた議論をスタートさせた。新型コロナウイルス禍を経て観光客が回復し、市バス車内の混雑やごみのポイ捨て、騒音などの観光課題が再燃する中、どこまで思い切った対策を打ち出せるかが問われそうだ。

 新型コロナ流行前は、政府が掲げたインバウンド(訪日外国客)政策の波に乗り、京都市を訪れた観光客は19年まで7年連続で年間5千万人を超え、観光消費額も4年連続で1兆円を突破し、京都経済を潤した。半面、観光客が特定の場所に集中し、一部地域で市民が市バスに乗れなかったり、交通渋滞を引き起こしたりなどして、市民生活に大きな影響を及ぼした。

 こうした課題を解決するため、市は場所、季節、時間という三つの「分散化」を掲げ、右京区京北や左京区大原など市周辺部の観光振興を図る「とっておきの京都」や、朝と夜の観光PR、夏や冬の観光閑散期のキャンペーン強化などに取り組んできた。季節と時間は一定の効果を挙げたものの、伏見稲荷大社(伏見区)や清水寺(東山区)など特定地域への集中を防ぐことができなかった。

 それから2年余り。新型コロナに伴う政府の行動制限により課題は一時的に解消したが、水際対策が緩和された22年、市内を訪れた観光客数は4361万人に回復。昨年5月に新型コロナが5類に移行すると、観光課題が再燃し、市が昨年10~11月に実施した市民意識調査でも6割超が観光地やバス・地下鉄の混雑を実感していた。

 昨年度は近畿運輸局と連携してJR京都駅(下京区)に手荷物預かり所を設置したり、観光バスの路上駐車防止に向けてバス会社に警告文を出したりして、一定の効果を挙げている政策もあるが、市役所内からは「対症療法が多く、抜本的な政策に踏み込まないと解決できない」(市幹部)との声も出ている。

 PTは観光政策監をトップに計26人で構成する。本年度は計3回開き、秋や春の対策の協議や取り組みの検証を行う。26日の初会合では、大型連休中の市バス・地下鉄増発など混雑緩和策に向けた取り組みが報告された。

 オーバーツーリズムを巡っては、世界で思い切った対策をとる都市も出始めた。「水の都」として知られるイタリア・ベネチアは今月25日から、旧市街を訪れる日帰り客から5ユーロ(約840円)の入域料を徴収する取り組みを始めた。2月の市長選で初当選した松井孝治市長は公約で、市バス・地下鉄の「市民優先価格」創設や観光シーズンのマイカー乗り入れ抑制など踏み込んだ政策を打ち出している。いずれも現行法令や実効性に高い壁があり、PTがどのような結論を出すか注目される。

 オーバーツーリズムに関するPTは19年5月にも設置されているが、抜本的な課題解決には至らなかった。看板倒れに終わらぬよう、国や京都府、民間業者と連携して実効性のある施策を打ち出す必要がある。また、観光が京都経済に及ぼす好影響を市民が実感できるような仕組みづくりも求められる。

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