神宮外苑の再開発は「人権に悪影響を及ぼす可能性がある」国連人権理事会が報告書で指摘

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が5月、2023年7〜8月に日本で実施した調査の報告書を発表した。

政府や企業に対する提言や勧告が盛り込まれた報告書では、東京・明治神宮外苑の再開発についても触れられており、「人権に悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念が表明されている。

東京・明治神宮外苑のいちょう並木(2024年4月28日撮影)

作業部会が「健康、気候変動、自然環境」を扱った部分で問題視したのが「環境影響評価(アセスメント)」における「パブリックコンサルテーション」の不十分さだ。

「環境影響評価」とは、開発事業を行う際に、環境への影響を事前に調査、予測、評価する制度のこと。

「パブリックコンサルテーション」は、政策や計画、提案、法律に対して広く市民や関係者の意見を募り、透明で民主的な決定をするためのプロセスだ。

作業部会はこのパブリックコンサルテーションが不十分な事例の一つとして、神宮外苑地区の再開発プロジェクトを挙げ、「人権に悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念を表明。

気候変動による影響を特に受けやすく、危険にさらされている市民らと、意義あるコンサルテーションを行うよう政府や自治体などに求めている。

市民や専門家は見直しや対話型説明会を求めてきた

神宮外苑の再開発では、樹齢約100年の大木を含む数多くの樹木を伐採・移植して、野球場やラグビー場を建て替え、高層ビルを建築する。

この計画が自然や景観を破壊すると懸念する市民が見直しを求めており、オンライン署名には、これまでに23万人以上が署名。スポーツをする場所や緑が奪われるという理由で、子育てをしている近隣住民らも、子どもたちの権利を守ってほしいと訴え、対話型説明会の開催を求めてきた

また、環境影響評価の世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部は2023年、「環境アセスの進め方に科学的な観点から問題がある」として、東京都の小池百合子知事に工事の中止などを勧告した。

ユネスコの諮問機関である国際イコモスも2023年に、ヘリテージアラートを出し、東京都や事業者に計画の見直しを求めている。

ビジネスと人権の作業部会は報告書で「調査では、人権と、ビジネス活動が環境に与える影響との関連性に対する意識の低さが見られた」とも指摘。

「企業には人権を尊重する責任がある。それには健康的できれいかつ持続可能な環境を享受する権利が含まれている」と強調している。

報告書は6月に国連人権理事会に提出される。

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