ラファ地上作戦、一線を越えていないと米政府 イスラエル軍は中心部に到達か

パレスチナ自治区ガザ南部ラファでのイスラエルの軍事行動について、米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は28日、イスラエルが本格侵攻を始めたとはアメリカはみていないと述べた。

ラファをめぐっては、イスラエル軍が中心部まで到達し、エジプトとの境界を見下ろす戦略上重要な丘を占拠したと報じられている。

イスラエル軍の戦車が、重要地点とされるアル・アウダ環状交差点に停車しているとの目撃証言もある。ラファ西部で28日朝にかけて一晩中、激しい砲撃があったと話す住民もいる。

アメリカのジョー・バイデン大統領はこれまで、まだ数十万人の民間人が避難しているとされるラファへの本格侵攻は、一線を越えるものだとしている。今月上旬には、ラファで大規模な地上作戦が行われれば、イスラエルへの武器供給の一部を停止すると述べていた。

そうしたなか、26日にはラファの避難者たちのテントが並ぶキャンプがイスラエル軍に空爆され、火災が発生。少なくとも45人が殺害された。

イスラエルはこの火災について、ハマスが周辺で保管していた武器が爆発して起きた可能性があるとの見方を示している。

「大規模な軍事行動は確認していない」

カービー氏は28日の記者会見で、この空爆で主に女性や子ども、高齢者が犠牲になったことを示す画像について、「悲痛で」「おぞましい」とコメント。「この紛争で罪のない命が失われてはならない」と付け加えた。

一方で、この事案についてはイスラエルが調査中だとし、「話すべき政策の変更はない」と発言。「大規模な地上作戦が確実に実施されるとはまだ思っていない。(中略)現時点でそうした動きは確認していない」とした。

記者団から、現在の作戦が本格侵攻に当たらない理由を聞かれると、カービー氏は、米大統領が「指揮している」わけではないと返答。

「私たちは(イスラエル軍が)ラファに突入するのを見たわけではない」、「大規模な部隊で、多数の兵士らが隊列や編隊を組んで、地上の複数の標的に対してある種の調整された行動をとっているのは確認していない」とも述べた。

別のキャンプでも21人死亡の報道

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、26日のラファ空爆を「悲劇的な誤り」だったとする一方、作戦は継続すると宣言している。

イスラエル軍はこの空爆について、イスラム組織ハマスの幹部2人を狙ったもので、両人とも殺害したと説明している。

ラファでイスラエル軍が地上作戦を開始して3週間となった28日、同軍はラファの「テロの標的」に対する活動は継続中だと発表した。

また、ラファ西部の海岸沿いのアル・マワシ地区にある難民キャンプをイスラエル軍が攻撃し、現地当局の発表で少なくとも21人が殺害されたと報じられていることについて、その内容を否定した。

ただ、ソーシャルメディアに投稿され、BBCヴェリファイ(検証チーム)が検証したこの事案の動画には、重傷を負った人々が映っていた。爆発があった場所やクレーターは明確ではなく、原因は特定できない。周囲の建物から、場所はラファとアル・マワシの間で、イスラエル軍が指定した「人道地域」の南だと分かる。

国連によると、ラファからは戦闘を逃れようと100万人近くが移動したが、まだ数十万人が避難生活を送っている可能性がある。

イスラエル軍は今月6日にラファ東部で「標的を絞った」地上作戦を開始。以来、戦車と兵士らが徐々に中心部などに迫っている。

(英語記事 Israel's operation in Rafah doesn't cross US red lines - White House

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社