ダンプ条件でBMWのヒルがポールから連勝。元世界王者ハフも待望の復帰後初勝利/BTCC第3戦

 英国が誇る伝統と格式のハコ車シリーズ、BTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2024年第3戦が5月25~26日にスネッタートンのフルコース“300“で開催され、週末の走り出しからBMWが猛威を振るう展開に。そのFP1から続く予選でも最速を決めたジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が、新規参戦ボビー・トンプソン(ゼウス・クラウド・レーシング・ウィズWSR/BMW 330e Mスポーツ)を従えポール・トゥ・ウインからの序盤2ヒートを制圧する強さを披露した。

 しかし最終ヒートでは様相が一変しトヨタ勢が逆襲に転じると、今季よりBTCC復帰参戦を果たした元WTCC世界ツーリングカー選手権王者ロブ・ハフ(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)が、サテライトチームの2台を従えてトヨタの歴史的ワン・ツー・スリーを牽引。これ以上ないかたちで、ハフが約20年ぶりの復帰後初勝利を飾っている。

 開幕より絶対エースのコリン・ターキントンと僚友アダム・モーガンに加え、元F1ドライバーのマーク・ブランデル率いるジョイントチーム、MBモータースポーツから参戦するヒルの3台体制となっていたBMW陣営だが、今季より3シリーズに大幅なアップデートを施しながら最後の1台を託すドライバーを模索していた名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、改めて公式テストにも参加したトンプソンにレースシートを提供した。

 初日雨絡みのコンディションのもと、その期待に応えたトンプソンは、FP1最速のヒルに続きFP2では“パープル”のカラーが新鮮なBMW 330e Mスポーツでいきなりのトップタイムを記録。新たな方式となる“Quick Six(クイックシックス)”導入の予選でも、ポール獲得のヒルと同じく最終セッションに進出(6台中5番手)してみせた。

 明けた日曜、ドライ路面で迎えたレース1はソフトタイヤを装着したポールシッターが主導権を握り、トラクションで優位な後輪駆動の特性も活かしてレースを支配。予選後にも「僕らBMW陣営は過去数年間、ここスネッタートンで非常に良い成績を収めてきたし、それを継続できることを願っている」と語っていたヒルが快適な“ライト・トゥ・フラッグ”で今季初勝利を決めることに。

 さらにその背後では、ディフェンディングチャンピオンのアシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)を差し置いたトンプソンが2位まで浮上し、BMWによるワン・ツーを完成させるサプライズを演じてみせた。

 続く現地14時25分開始のレース2を前にサーキット上空はふたたび巨大な雨雲に覆われ、スタート後にはレコードラインが乾いていく条件によりタイヤ戦略が混沌とする展開に。ここでフロントロウ発進を決めたヒルとトンプソンはシグナル消灯前にクラッチを繋いだとして“ジャンプスタート”の裁定を受け、ここで10秒のタイムペナルティが加算されてしまう。

名門最後の1台を獲得したボビー・トンプソン(ゼウス・クラウド・レーシング・ウィズWSR/BMW 330e Mスポーツ)
ジェイク・ヒル(レーザー・ツールズ・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)がまずレース1を先取
「(不調の)ブランズハッチ後に立ち直る完璧な方法で、本当に興奮している」と勝者ヒル
トップ10を争う後続では、ダンプ路面も影響して各所で接触バトルが多発する

■最終レース3ではハフが14番グリッドから驚異的ペースで追い上げ

 レース中にもサーキットには雨の第2波が襲来し、終盤以降スリックタイヤを履くためピットレーンに飛び込んだ王者サットンらのギャンブルが裏目に出るなか、ダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)とジョシュ・クック(LKQユーロ・カーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)のFF勢を抑え切ったヒルが充分なマージンを築き、ペナルティのビハインドを跳ね返す連勝劇を飾った。

 迎えた最終レース3でもウエットタイヤを装着したヒルのBMWに対し、路面状況は周回が進むごとにみるみるドライアップが進んでいく。序盤でほぼ10秒の差を築いたとき、ヒルの賭けは成功したかのように見えたが、ここで後方14番グリッドから驚異的ペースで這い上がったのが元世界王者だった。

 終盤戦に向けカラーリングの異なるカローラに乗るクックやエイデン・モファット(LKQユーロ・カーパーツ・ウィズ・シネティック/トヨタ・カローラGRスポーツ)を仕留めたハフは、温存していたオプションタイヤと制限のない共通ハイブリッド機構の出力も活用し、そのまま首位のヒルを捕まえることに成功。詰め掛けたファンを沸かせるセンセーショナルな走りでチェッカーを受け、トヨタ陣営のスピードワークス・モータースポーツ(SWM)に歴史的なワン・ツー・スリーの勝利をもたらした。

「こうしてまたBTCCで勝てるなんて! これこそ僕がここへ戻ってきた理由だ」と、自身2004年の同地スネッタートン以来となる劇的な勝利を収めたハフ。

「週末を通してクルマの感触は素晴らしかった。到着時のセットアップからほとんど変更を加えず、チームは素晴らしい仕事をしてくれたんだ。変わりやすいコンディションにはつねに自信を持っているし、スリックタイヤでのレース2は再度の雨が落ちるまでとても良い感じだったんだよ」と続けたハフ。

「最後のレースで14番グリッドから優勝できたのは素晴らしいこと。トヨタは本当にうまく調整されており、まさに今季に向け僕が探していたものだ。チームは本当に成果を出し、カローラは僕に必要なものをすべて与えてくれた。そんなクルマが手元にあれば、全力を尽くす以外に選択肢はないよ」

「エイデン(・モファット)とジョシュ(・クック)の両方と素晴らしい戦いをしたし、ホームトラックで勝利を持ち帰ることができたのは本当に素晴らしい。2004年のスネッタートンでの勝利を再現することは、僕だけでなく家族や友人にとっても非常に特別なこと。今後も勝ち続けるつもりさ!」

 レース1の3位表彰台を最後に、開幕から続いてきた連続表彰台記録が“7”で途切れた王者サットンが、それでも10ポイント差で選手権首位を堅守した週末。続くBTCCのシーズン第4戦は6月7~9日にスラクストンで争われる。

そのトンプソンも、BMWでのデビューの週末に、現役王者を撃破して2位まで駆け上がる印象的な走りを披露
10秒のタイムペナルティを受けたにもかかわらず、レース2でもヒルが勝利をさらった
レース3で約20年ぶりのBTCC復帰後初勝利を飾ったロブ・ハフ(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)
「2004年のスネッタートンでの勝利を再現することは、僕だけでなく家族や友人にとっても非常に特別なこと。今後も勝ち続けるつもりさ!」とハフ

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