学校法人業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2024年)~2022年度における学校法人業務アウトソーシングの市場規模は前年度比104.0%の1,870億円、学生数減少や間接業務コスト削減など学校法人を取り巻く環境が厳しさを増すなか、今後も拡大基調~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の学校法人業務アウトソーシング市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年度における学校法人業務アウトソーシングの市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比104.0%の1,870億円であった。2022年度は、コロナ禍から徐々に人流が回復しつつあるなか、対面授業再開などを受け、大学キャンパスにも学生が戻り、学生や教職員向けの保険や旅行、また学生向けの寮やアパートなどの不動産仲介等の代理店業務や学内施設管理・清掃業務、食堂や売店の運営業務などの業務委託(アウトソーシング)需要が復調した。食堂や売店などの福利厚生サービスについては、着実に回復する一方、食材費の高騰やコロナ対策に伴う設備投資などのコスト負担が軽減されることはなく、とくに食堂運営の単体サービスでは収益を見込みにくい状況になっている。また、事務や人材派遣事業に関する業務委託については、コロナ禍前の水準にほぼ回復しているものとみられる。

2.注目トピック~大学収益事業法人の主な事業領域は「代理店業務」が最多

本調査結果から、大学の出資する収益事業法人130社(2024年3月現在)のうち、最も多い参入事業領域は、保険、旅行、不動産等の「代理店業務」で、収益事業法人全体の83.8%にあたる109社が事業参入していることがみてとれる。次いで「施設管理・清掃」は92社(70.8%)、備品・教具等の調達業務である「購買・調達」は85社(65.4%)となっており、これら3業務が学校法人業務アウトソーシングの主要業務となっている。

3.将来展望

2023年度における学校法人業務アウトソーシングの市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比102.7%の1,920億円を予測する。2023年度は、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことから、学食・カフェなどの座席数の制限を撤廃する動きがみられ、学食・カフェなどはコロナ禍前と同様に営業ができるようになった。また、学生の卒業旅行需要や教職員による会食の需要なども回復してきている。

学校法人のコスト削減ニーズを取り込み、事務作業を中心に間接業務の業務委託(アウトソーシング)は着実に増えてきている。業務委託サービス事業会社各社は、こうした定型業務を中心とした間接業務の業務受託案件を増やしており、担当業務領域の拡大を積極的に進めている。

今後ますます少子化が進展し、学生数減少により従前の授業料収入が見込めないなか、間接業務のコスト削減など、学校法人を取り巻く環境は厳しさを増すことが想定される。こうしたなか、今後も学校法人業務アウトソーシング市場は拡大基調にあるものと考える。

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