光の論理量子ビットを世界で初めて生成 誤り耐性のある量子計算の実現へ

量子コンピュータにおける情報の単位「量子ビット」は、外部の物理的な影響やエラーが生じると、情報を保持できなくなることがある。「論理量子ビット」はエラーの情報を取り出し、情報を復元することで情報を保持するもの。エラーを修復して正しい計算結果を出力できる「誤り耐性型コンピュータ」の実現に欠かせない。通常、論理量子ビットを作るには多数の量子ビットを組み合わせる必要があり、誤り耐性型量子コンピュータ実現の障壁になっていた。

GKP量子ビットは、光パルスを用いた論理量子ビットで、1つの量子ビットのみで論理量子ビットを実現できる。すでに仕組みは提案されていたが、光で行うのが困難な乗数などの非線形計算の操作が必要だったため、実現していなかった。

紺野さんらは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と共同開発した超電導光子検出器(図1)を用いてGKP量子ビットを実現した。初めに「シュレーディンガーの猫状態」と呼ばれる、位相が反転したレーザー光を重ね合わせた状態を作成。線型光学素子を用いて光の状態を変え、GKP量子ビットの光の状態に整形した。

(図1)東大と NICT が共同開発した超伝導光子検出器(発表資料より引用)

得られたGKP量子ビットの状態を表す電磁場の分布構造(図2)は、複数のピークを持ち、ピークが鋭く数が多いほど、GKP量子ビットの質は高い。今回用いた方法を繰り返し行うとピーク数が増加したため、質の高いGKP量子ビットの実現が可能になる。今回の研究結果は、大規模な誤り耐性型量子コンピュータの実現につながるものだと期待される。

(図2)生成した誤り訂正のための電磁場の分布構造の観測結果(発表資料より引用)

The post 光の論理量子ビットを世界で初めて生成 誤り耐性のある量子計算の実現へ first appeared on 東大新聞オンライン.

© 公益財団法人東京大学新聞社