「日本で6600円の大吟醸がNYで450ドル!」 蔵元に聞く 海外での日本酒事情

泉橋酒造株式会社の橋場友一さん

昨今の円安により、日本人が欧米などを訪れた際、様々なモノの価格の高騰に驚愕する日々ですが、海外の和食ブームの流れを受けて注目されている日本酒も、現地ではビックリするような価格で取り扱われているそうです。このたび、ラジオ番組で蔵元が明かしました。

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神奈川の泉橋酒造株式会社で代表を務める橋場友一さん。安政4年(1857年)創業、酒米づくりから醸造までを行う老舗酒造の6代目蔵元は、「田んぼで育つトンボを殺さないような農業」を行うなど、自然環境に配慮した取り組みのもとで酒づくりにまい進し、東京・神奈川といった首都圏を中心に日本酒などを出荷しています。「小さい蔵なので、(出荷量は)720mlでだいたい25万本くらい。(酒米は)9割地元で、海老名、座間、相模原市で(栽培している)」。

ラジオ番組『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』(ラジオ関西)のなかでは、番組パーソナリティーを務めるフリーアナウンサーの田中大貴から、「日本酒は安いし、こんなコスパがいい。こんな優秀なお酒は、世界ではないのでは? 1500円とかで750ml飲めるのはなかなかないもの」という話しが。

これに対して、橋場さんは「なかなか高いお酒はつくりづらいもの。安いというわけではないが、コストパフォーマンスがいいお酒(づくり)に慣れているのと、社内で話していても、われわれは普通の庶民であり、そんな高いお酒とかを普段飲んでいないので、値段を決めようとなったとき、酒屋さんや飲食店さんも含めて、なかなかそういう(高級志向の)発想にならない。昔からのある程度の蓄積があるので(一定の価格帯で)やれている」と、現場の実情を吐露します。

そのなかで泉橋酒造は新たな挑戦も行いました。それが、同社のとんぼラベル誕生20周年を記念した限定酒「TONBO20(トンボ・トゥエンティー)」の発売。価格は720ml入りで2万2000円と、これまでに比べて高価格帯に設定したものですが、橋場さんいわく好評で、「海外でも売れます」とのこと。

海外ではアメリカ・香港・シンガポールなどに輸出しているそうですが、なかでも、アメリカ・ニューヨークでは高級和食店でのニーズがあるそう。コロンブス・サークル付近にある有名店「Masa」にも泉橋酒造の日本酒が置かれているとのことで、そこでは日本で6600円の大吟醸が、なんと1本450ドル(日本円で約7万円)で取り扱われているといいます。

「為替とチップを入れると(日本の価格の)10倍以上。流通で、高くなっちゃうのはしょうがないが、造り手として行って、『うわ、高っ!』みたいな感じだった」と橋場さん。「円安なので、ありがたいことに輸出関係の値段は上げさせてもらっているが、びっくりしたのは、先月に行っても向こうでの卸価格は変わっていなかったこと。うちらは値上げしているけど、問屋さんは上げなくても『為替があるから大丈夫』みたいな感じ」と、海外市場の高騰ぶりに、蔵元も驚嘆の声をあげていました。

最近の日本酒需要について、甘め・軽め・微発砲のものが好まれているのを、造り手としても実感するという橋場さん。「初めてお酒を飲んだとき、ちょっと甘めのほうがわかりやすいというのはある。また、最後はだんだん辛口で燗酒がいいみたいなものはあると思う」と述べます。さらに、酒づくりに関わる人に20代・30代が増えていることも、近年「し好がだいぶ変わってきている」要因に挙げていました。

「お米は光合成、太陽と空気と土とお水でできるので、土づくりを頑張るということは最終的に良いお米ができて、良いお酒になるということ。そういう意味で農業をやるのは大事。減農薬は大変だが、肥料などを余計にあげない、人間でいえば筋肉質なイメージで育てている」と、酒米づくりへのこだわりも明かした橋場さん。

番組の最後には「日々、農業を辞める方がけっこういらっしゃって、全国的にもそうですが、預かる田んぼが毎年増えている。だから、より良いお酒を売って日本の農業を守っていきたい」と今後の展望を語っていました。

※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2024年5月20日放送回より

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