トランプ前大統領の「口止め料」裁判で最終弁論 元顧問弁護士の信用性が焦点に

ドナルド・トランプ前米大統領が「不倫口止め料」の支払いをめぐって業務記録に虚偽記載をした罪に問われている裁判で28日、最終弁論が行われた。

トランプ前大統領の弁護人は、前大統領の元顧問弁護士で検察側の最重要証人となっているマイケル・コーエン氏を、「史上最大のうそつき」だと糾弾した。

これに対し、検察側は長時間の反論を展開。コーエン氏を、前大統領に不利な証拠の「山」の「ツアーガイド」だとした。

裁判では今後、12人の陪審員が業務記録の改ざんについて、合理的な疑いを超えて有罪かどうかを評決する。

トランプ前大統領は、2016年大統領選を前に、不倫相手とされる元ポルノ映画スター、ストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に13万ドル(約2千万円)の「口止め料」を支払うようコーエン氏に指示し、これを隠すためにコーエン氏が肩代わりした口止め料の払い戻しを弁護士費用と偽って処理したとして、34件の業務記録の虚偽記載の罪で起訴されている。

検察側は、前大統領がこの時、2016年大統領選に不法に影響を及ぼす意図に突き動かされていたとも主張している。

前大統領は無罪を主張し、ダニエルズ氏との性的関係についても否定している。

コーエン氏は「史上最大のうそつき」だと弁護側

前大統領側のトッド・ブランチ弁護士は28日の最終弁論で、前大統領には業務記録に虚偽の記載をしたり、選挙介入をしたりする意図はなかったと熱弁した。

また、コーエン氏の信用性を攻撃し、同氏を「合理的な疑いの体現者」だと呼んだ。

ブランチ弁護士はさらに、コーエン氏が2018年に議会での偽証罪について有罪を認めたことに言及。コーエン氏が元雇用主から盗んだことを認めており、現在は前大統領に「恨み」をもって生きていると、陪審員らに語り掛けた。

「コーエン氏はまさに、うそつきのMVPだ」

前大統領はこの間、椅子を回転させ、時折目をつむりながら、弁護人がこの裁判に対して激怒するのを見守った。

しかし、この訴訟での立証責任は検察側にあり、有罪判決を勝ち取るためには、陪審員たちにトランプ前大統領の有罪を、合理的な疑いを超えて納得させなければならない。

ジョシュア・スタイングラス検事は最終弁論に4時間近くを費やし、最後にはホアン・マーシャン判事の命令で、午後8時頃に弁論を終わらせた。

その核心は、この訴訟は「陰謀と隠蔽(いんぺい)」に対するものだと、スタイングラス検事は述べた。

検察側は過去5週間にわたり、ダニエルズ氏への口止め料とコーエン氏への払い戻しをめぐる数十件の文書や録音を裏付けるため、多数の証人を呼んだ。

スタイングラス検事は、ダニエルズ氏の「うんざりするような」証言や、同氏が持ち込んだかなりの「荷物」など、何人かの証人に問題があることを認めた。

一方で、「被告はコーエン氏を選んだ。自分のフィクサーとして!」、「我々が適当にコーエン氏を証人に選んだわけではない」と述べた。

スタイングラス検事は陪審員に、「コーエン氏が好きかどうか、コーエン氏とビジネスをしたいかどうか」を検討すべきではないと訴えかけた。そして、コーエン氏を、「ある人物、そのたった一人」を助けたことを示す証拠の「ツアーガイド」として見なければならないと述べた。

そのうえで、陪審員たちは「一連の余分なものを無視」すれば、トランプ前大統領を有罪とすることになるだろう、と付け加えた。

司法専門家の中には、前大統領が2016年大統領選に違法に影響を与えたという別の犯罪を隠す目的で業務記録を改ざんしたという、より広範な理論で陪審員を説得するのは、容易なことではないと言う者もいる。

一方で、検察側は最終的な主張に時間をかけすぎたのではないか、との意見も出ている。

元連邦検察官のネアマ・ラフマニ氏はBBCに、「法律家はおしゃべりが好きだが、このような事件では言葉が少ない方がいい」と述べた。

12人の陪審員は、トランプ氏の司法上の運命を検討し、全員一致で有罪または無罪の評決を出さなければならない。意見がまとまらず評決に至らなかった場合、裁判は審理無効となる。

(英語記事 Trump lawyer tells jury Cohen is 'greatest liar of all time'

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