レオピン杯で見えたアンプティサッカーの魅力や広がり。北澤豪は「色んな軸を増やしていける状況になっている」

5月25・26日、アンプティサッカーの全国大会「第九回レオピン杯Copa Amputee」が大阪市の鶴見緑地球技場で行なわれた。

アンプティサッカーは、クラッチ(主にロフストランドクラッチと呼ばれる医療用補助器具)をつきながらプレーするサッカーで、障がい者サッカーのひとつ。日本では2010年に始まり、現在、全国に11チーム、100名弱が登録選手としてプレーしている。

「レオピン杯Copa Amputee」は、年2回行なわれるアンプティサッカーの全国大会のひとつで、第9回大会の今大会は、合同チームを含めた6チームで争われた。

昨年に引き続き、今年も健常者のスタッフがノンアンプティ選手として参加。各チームのスタッフらが片足を上げて、アンプティ選手に混ざってプレーした。

関西セッチエストレーラスの川西悠太さんは、いつもスタンドから兄を応援していたが、今年初めて同じピッチでプレー。サッカー経験もあり、代表選手相手にも物怖じすることもなかったが、「速すぎてついていけない。足が重い」とアンプティ選手のすごさに率直に驚嘆していた。チームは準優勝となり、川西さんはベストノンアンプティ選手に選出、表彰された。

サッカー元日本代表で日本障がい者サッカー連盟会長の北澤豪さんは、「ノンアンプティ選手のプレーは、複合的にやっていくという点でいいですよね。日本ではひとつの競技だけプレーすることが多いですが、海外は複数のスポーツをする傾向がある。パラスポーツもそんなに競技人口が多くないなかで、取り合いみたいにならないほうがいい。大きなくくりの中でお互いが支えていく、という方向に進めばと思います」と話した。

スタジアムにはハリセンを持った一団から大きな拍子や声援が送られた。その中心には、日新火災海上保険株式会社の社員など約70名がいた。社員の新井誠治さんがFCアウボラーダでプレーしていることもあり、毎回応援に駆けつけている。

日本アンプティサッカー協会のパートナーでもある日新火災海上の織山晋代表取締役社長は、「社員もいるということで、有志で応援に来ています。実際、体験してみると非常に難しく、選手たちのプレーのすごさがよく分かります。エキサイティングなプレーの一方で、小さいお子さんや女性もプレーしている。そんな風に選手たちの頑張る姿を見ると、社員も元気づけられたり、勇気づけられたりしています」と会社の一体感やモチベーションにも繋がっていると話す。

北澤さんは、「コロナ後に、チームが集まらなくなって、大会自体が危ぶまれました。日頃の大会があって、日本代表の盛り上がりもあることから、大会を取り戻すという軸が必要でした。これはこの2年で実現でき、今回さらにレディースカップを開催し、女子普及の軸ができた。

また、体験教室などで地域の人たちの参加の軸もある。スポーツは参加し、理解してもらうのに適しているので、企業の理解や法制度が進んでいくと関わりの軸が広がっていく。アンプティサッカーでも、運営スタッフや学生が育ってきていて、こうやって色んな軸を増やしていける状況になっており、さらに魅力を拡げていくことができる」とアンプティサッカーの今後について語った。

大会は新井さんの所属するFCアウボラーダが優勝。6年連続7回目のVにスタンドからは大きな声援が起きた。今後は、11月にインドでのアジア大会が予定されており、日本代表の活躍も期待される。

取材・文 森本茂樹

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