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AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝という、悲願達成はならなかった。横浜F・マリノスは、リードを手にしてアウェイでの決勝第2戦に臨んだが、まさかの大敗。結果が悔しいものであることに変わりはないが、サッカージャーナリスト後藤健生は、この敗北から学ぼうと試合を分析。試合の流れを一変させた「分岐点」と、チームの「問題点」「改善点」を示すとともに、Jリーグのチームが今後、どのようにしてACLとつきあい、戦っていくべきかを考える。
■「1点リード」のアドバンテージ
横浜F・マリノスは、せっかくホームでの第1戦で逆転勝ちして獲得した「1点リード」という状況を、もっと生かして戦うべきだった。
5月11日に行われたホームでの第1戦では、アル・アインは引き気味に守ってカウンターを狙ってきた。そして、前半の13分にソフィアン・ラヒミがスピードを生かして突破して、こぼれ球をモハンメド・アルバルーシが決めるという、まさに狙い通りの形で先制した。
だが、その後は横浜FMがゲームを支配。なかなか同点にできずに苦しんだものの、試合の終盤になって植中朝日と渡辺皓太が決めて横浜FMは逆転勝ちに成功した。
従って、そのリードをどう生かすかというのが第2戦のテーマだった。
第2戦の最大の見どころは、第1戦ではカウンター狙いだったアル・アインのエルナン・クレスポ監督が、どのような戦い方を選択してくるかだった。
ACLを勝ち上がってきたカウンター・サッカーのままなのか、それとも、勝たなければいけない状況なので、より攻撃的に来るのか……。横浜FMとしては、それを早く見極めて対応する必要があった。
アル・アインは、第1戦では出場機会のなかったサイード・ジュマを左サイドバックに入れただけで、他の10人の先発メンバーには変更がなかった。だが、前線のポジションを変えてきた。そして、戦い方も明らかに変わっていた。
ワントップのラヒミの後ろの2列目。第1戦では右からモハンメド・アルバルーシ、アレハンドロ・ロメロ(通称カク)、マティアス・パラシオスという並びだったが、第2戦では同じく右からカク、パラシオス、アルバルーシ。そこに、ボランチのヤヒア・ナデルも加わって、横浜FMの最終ラインの裏のスペースにさまざまな選手が飛び出す形を狙ってきた。
■「裏返された」横浜FMのプレッシング
これに対して横浜FMは、相手ボールに対して高い位置からプレスをかけて奪いにいこうとした。
横浜FMは、第1戦のイメージのまま戦っていたのだろう。
第1戦ではアル・アインは引き気味に戦っており、そこから前線にロングボールを蹴り込んでくるのだが、ロングボールの精度が低かったので、横浜FMにとって大きな脅威とはならなかった。そこで、横浜FMとしては高い位置からプレスをかけることによって、相手のロングボールの出しどころを制限しようとしたのだろう。
しかし、アル・アインは、横浜FMの選手がボールを奪いにアタックしてくるのを利用して、それよりワンテンポ早くワンタッチで裏を狙ってきた。こうして、横浜FMのプレッシングは見事に裏返されてしまったのだ。
1点リードのアドバンテージを持っていた横浜FMとしては、立ち上がりにはもう少し相手の様子を見てもよかったのではないだろうか。無理にボールを奪いに行ってひっくり返されてしまうくらいなら、戦い方を切り替えてスペースを埋めて、構えて守って相手の動きが落ちるのを待ってもよかったのではないか。
■流れを引き寄せた「ダブルボランチ」変更
横浜FMの守り方を逆手にとって裏を取ることに成功したアル・アインは、前半の9分に素早いパスをつないで先制ゴールを奪い、精神的にも優位に立った。クリアボールがハーフライン付近にいたヤヒア・ナデルに渡ると、ナデルはそのボールをすぐにトップのラヒミに預け、そのままトップスピードでペナルティーエリア深くまで侵入。ナデルはラヒミからのパスをヒールでラヒミに戻し、ラヒミが横浜FMゴールに突き刺した。
その後、横浜FMはアル・アインの猛攻を受け続けたが、なんとかゴール前を固めて、さらなる失点を防ぐと、20分過ぎにはMFの並びを変えて守備を安定させることにも成功した。
スタートは喜田拓也をアンカーにして渡辺皓太と植中朝日をインサイドハーフに置く「逆三角形」だったが、渡辺のポジションを下げて喜田と2人で中盤の底のスペースを埋めたのだ(昨年まで、横浜FMはボランチ2人の形で戦っており、今シーズン就任したキューウェル監督がより攻撃的な「逆三角形」の形を取り入れた)。
横浜FMが中盤の並びを変えてからはボールを持つ時間も長くなり、26分に右から攻撃参加した松原健のクロスを渡辺がシュートして初めての決定機を作ると、28分にも左のエウベルからのクロスを喜田がシュート。横浜FMが、次第に流れを引き寄せ始めていたのだ(そこで、あのVARによるPKが生まれた)。
もちろん、これは結果論ではあるが、せっかく「1点リード」で臨むことができたのだから、第2戦は最初からこの守備的な並びでスタートすべきだったのではないかという気もする。少なくとも、まずは様子を見るべきだったろう。