フェデラーの艇庫建設に反対運動 「湖岸への出入りを阻害」

2017年、チューリッヒ湖畔で開かれたチャリティー試合「Match for Africa 3」でプレーしたロジャー・フェデラーさん (KEYSTONE/© KEYSTONE / ENNIO LEANZA)

スイスの元テニス選手、ロジャー・フェデラーさんが計画するチューリッヒ湖畔のボートハウス(艇庫)建設に対し、「人々の湖畔の往来を阻害する」として反対する声が上がっている。

誰もが湖岸に出入りする権利を擁護する団体「リヴ・ピュブリーク(Rives Publiques)」は、フェデラーさんがザンクト・ガレン州ラッパースヴィール・ヨーナ市に属する自分の土地に艇庫を建設する計画に対し、州と市それぞれに異議を申し立てた。

州による建築許可の審査には約2カ月かかる見通し。だがリヴ・ピュブリークは、艇庫建設が許可されればスイス全土に前例が作られることになるのではないかと懸念している。

同団体のビクトル・フォン・ヴァルトブルク会長はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)の取材に、「ロジャー・フェデラーや湖畔に住む人々に対しては何も恨みはない。だが彼らは人々から湖岸を奪ってはならない」と話した。

リヴ・ピュブリークは2003年に設立され、スイスの湖や水路への自由なアクセスを求める運動を行っている。フェデラーさんの艇庫が承認されれば、「多くの人が『ロジャー・フェデラーが手に入れたのなら、私も欲しい』と言うだろう。すると湖畔は建設物で埋め尽くされるだろう」(フォン・ヴァルトブルクさん)

ボーデン湖では水上の遊歩道計画も

ザンクト・ガレン州建設環境局のラファエル・ハートマンさんはSRFに対し、異議申し立てを受理したことを確認した。同氏は驚かなかったという。「建設許可申請に対しては既に異議申し立てが出ていた。州に対しても異議が申し立てられるだろうと予想していた」

今後の焦点は、艇庫が水域に設置されることが許可されるかどうかだ。ラッパースヴィール・ヨーナ市は、州の判断を見極めるため、異議申し立てを保留している。

スイス北東部ボーデン湖畔のロルシャッハーベルク市では、2019年の住民投票で湖畔に遊歩道を建設する案が可決された。湖畔にある別荘の敷地を通らないようにするため、市は水上への遊歩道設置を計画している。2本の遊歩道を埋め立てた「島」で結ぶ。

湖上の遊歩道はリヴ・ピュブリークにとって解決策となるか?フォン・ヴァルトブルク会長はそれを否定する。「湖上の遊歩道は、登山道に関する連邦法に準拠しておらず、解決策にならない。少なくとも、非常に悪い解決策だ」

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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