元K-1ガールズ、現在は壁面アーティストに 初仕事はビル5階の高さで作業「本当に怖かった」

「巌流島バーチャルファイト」では“闘いの女神”アテナを務めた

「THE MATCH」でのオープンスコアリングに驚き

巌流島のYouTubeチャンネルにて「バーチャルファイト」が今月3日、配信された。もうすぐ45万回再生を記録する大会動画は、異世界かどこかの遺跡の中にある闘技場を思わせる3DCGの中で、キックボクシングやMMAなど4試合を実施したが、そこに“闘いの女神”アテナとして登場したのが花池ラヴィである。かつてはK-1ガールズの一人でもあったラヴィとはいったい何者か?(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「2022年まで5年間、K-1系のラウンドガールをやっていました。最初はKHAOS(カオス)ガールを1年、その後にKrushガールを3年、K-1ガールは最後の1年かな。最初はラウンドガールをやりたいわけではなかったんです。全く格闘技も知らなかったし。元々は大会に出るくらい筋トレにハマっていて。頑張って準優勝したこともあります」

ラヴィは筋トレ好きが講じて筋トレ好きの集まりに参加しつつ、フィットネスウエアなどのモデルをしていた。

「それをまとめている方がK-1のスポンサーをされていたんです。それで、その集まりの中からK-1ガールを出そうみたいな雰囲気になって、オーディションに連れて行ってもらって。最初はKHAOSガールから始まったから、そこから試合を見るようになって、そこから徐々に格闘技を好きになっていったって感じです」

K-1ガールズ時代、最も印象深かったことがある。それが那須川天心VS武尊戦が行われた、「THE MATCH」(2022年6月19日、東京ドーム)だった。

「いろいろ思い出はあるんですけど、やっぱり一番はあの大会ですね。人生の中でも1番の思い出にランクインするぐらい、めちゃくちゃ楽しくて。本来であれば見る側でしか行けないじゃないですか。実際、チケットは買っていたんです。絶対に観たいと思っている試合が多かったから。そこを、演出側で来たぞ自分みたいなのがあって。あの時は2、3試合ぐらいラウンドしているんですけど、セミファイナルの海人VS野杁正明戦もやらせていただきましたね」

海人VS野杁戦ではオープンスコアリング形式(ラウンド間にジャッジの点数を公開)が採用された。ラヴィは率直に驚いたという。

「今までにない感じの空気感を味わえて、判定になった時に、どっちが勝つの? みたいなことになったじゃないですか。確か3Rだったかな。それと終わりのラウンドの時、もうめちゃくちゃ歓声がすごくて。音楽とか全く聞こえないぐらい、わあーっ!! てなったんですよ」

実際にラヴィが描いた、東京・浅草にあるウォールアートの前で

高さ12メートルのビルにウォールアートを描く

「『THE MATCH』の日はR-1SE ForceとRIZINガールもいたんですけど、私はK-1ガールズとして参加しているから、みんなで戦っている気分だったんです。もちろん円陣とか組んだりはしていないけど、もう『TEAM K-1』として戦うぞっていう感じでした。だから絶対に全員で勝つみたいな。覚えているのが、当日の始まる前にABEMAの格闘部門の北野雄司プロデューサーさんとたまたますれ違ってごあいさつをしたら、『はい、頑張りましょう』って言われたんですね。それで、まず気合が入りました」

結果的にK-1の武尊は天心に判定ながら敗れ、野杁もシュートボクシングの海人に敗れた。対抗戦ではK-1の負け越しという結果になった。

「めちゃくちゃ落ちてました。野杁選手が負けた時に、『え、負け…負けたの?』みたいな雰囲気になって、武尊選手が天心選手に負けた時も落ちました。だけど、それでもあの大会に参加できたことがめちゃくちゃいい思い出にはなりましたね」

ここまでは、筋トレ好きからK-1好きになったラウンドガールの話になっているが、ラヴィには他人とはひと味違った特技がある。それはビルの壁にエアブラシを使って描く、ウォールアートである。

「ウォールアート自体は、まだひとつしか作品はないんですけど、元々は750ccのバイクの免許を持っているので、バイクのタンクに描こうと思ったんですよ。それまではシューズやジーンズや看板に描いていて。たまたま知り合いの方が『お店を浅草に出すから、ビルに描いてみたら? チャレンジしてみたら?』みたいなことを言ってくださって、勢いで『是非お願いします!』って言っちゃったんです」

だが、実際にビルを確認すると、幅は3.7メートル、高さは12メートルもあった。実に5階建ての高さである。

「最初に真っ白いビルを見た時、天まで続く壁を目の当たりにして、なぜ私はこれを引き受けてしまったんだろう……と思いました。本来は素人がやるような大きさじゃないし、1人でやる大きさじゃなかったんです。それと描いたのは昨年末だったんですけど、ホント寒くて。ヘルメットを被りながら命綱を一本つけて、ヒートテックを何枚も重ね着しながらカイロを10枚ずつ手足に着けてやりました。足場も初めて組んだんですけど、それも初めてだったし、本当に怖かったです」

それでもラヴィは人生初の恐怖体験を乗り越えて見事にやってのけた。しかも、本来なら作品を描きながら、その場を離れて出来を確認しつつ、また描くのだろうが、ラヴィの場合はその方法は取らなかったというか、取れなかったという。

「巌流島バーチャルファイト」では、手の上にラウンドボードを乗せていた

グリーンバックの前では白と緑は透けてしまう

「決まりでシートをずっとかけながらでしかできなかったので、全体像が分からないまま進めました。本当はコピーしたものを素描きして、スクショしたり拡大したりしたものを1面ずつ計算しながら描くらしいんですけど、私はそんなの考えなかったから、勘でずっと描いていましたね」

結果、ラヴィの勘はズバリと当たり、ビルの壁面いっぱいに、富士山の傍を飛んでいく龍(ドラゴン)の画が完成した。注文を受けたのは秋ごろだったが、実際に足場を組んで描いた日数は9日間だった。

「今年は辰年だし、あとはインバウンドで海外からの観光客の方が多いので、日本っぽい画を描いてほしいっていうことでそうなりました。次はまず、バイクのタンクに描きたいですね」

5年間のK-1ガールズと、ビルの壁へのウォールアートを経験したラヴィだが、そこからなぜ巌流島に関わるようになったのか。

「谷川(貞治・巌流島プロデューサー)さんに拾われました(笑)。もちろん子猫みたいにその辺にいたわけじゃないですけど、知り合った時に、私が谷川さんにK-1の話を熱く語ったんですよ。たぶんその熱さが谷川さんはうれしかったのかな。私がK-1に関わっていたのは、谷川さんがK-1プロデューサーを辞めた後の新生K-1だったけど、熱く新生K-1を語るのが嬉しかったみたいです。『バーチャルファイト』に関しては、最初にスタジオに連れて行っていただいたのは2月頃だったんですけど、グリーンバックの前でどうやって試合をするのか。実際に、試合当日に見るまでは、ふわっとしていた感じでしたね」

それでも、大会当日は興奮しながら全4試合を堪能しつつ、アテナとして独特の衣装を身にまとうと、開会式では選手にグローブを手渡しつつ、ラウンド間には手のひらサイズのラウンドボードを持ったラウンドガールとしての役割も無事に務めた。

「試合が終わって、実際に編集された映像を見るまでは、最終的にどうなるんだろうと思っていましたね。それまでのラウンドガールとは少し立ち位置が違ったので面白かったですよ。背景がグリーンバックなので、緑や白だと透けてしまうんです。他にもいろいろ改善策はあると思うので、次回が楽しみですね」

確かに「リアルな格闘技をバーチャルな空間で! 格闘技の視聴・観戦体験は新たな時代へ!」とのコピーが示す通り、「巌流島バーチャルファイト」には新時代の格闘技へのチャレンジ精神があふれている。

「やっぱりどこかで試合のゲスト解説者はやってみたいです」

最後に今後の目標をたずねると、そう答えたラヴィ。“闘いの女神”アテナとしてラウンドガールの枠を超え、可能性はさらに広がっていく。“Show”大谷泰顕

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