Z世代の心ググっとつかむ上司の言葉...「ありがとう」圧倒的1位に 「日頃の感謝こそ、尊敬される上司の証し」

Z世代の若者は、尊敬する上司からどんな言葉を掛けられると嬉しいのだろうか。

人事向けサービスを展開する調査会社アスマーク(東京都渋谷区)が2024年5月15日に発表したリポート「自主調査『尊敬される上司の特徴・口癖』」によると、意外にシンプルな言葉がビシッと響くことがわかった。

それは、「ありがとう」。

これは、上司としてチャンスではないか。Z世代と有効な関係を築くコツを調査担当者に聞いた。

「さすが!」「期待してる」より3倍の効果

アスマークの調査(2023年11月15日~21日)は、20代~50代の正社員男女1200人が対象。Z世代(22~28歳)、Y世代(ミレニアル世代、29~42歳)、X世代(ポスト団塊ジュニア以上、43~59歳)を男女150人ずつの6グループに分けた。

まず、「尊敬する上司の特徴」を聞くと、全体のトップ3は「決断力・判断力がある」「親しみやすい」「業務能力が高い」だった。

女性Z世代は「親しみやすい」「誰に対しても公平に接する」が、それぞれ4割強と突出している。これに対し、男性Z世代は「決断力・判断力がある」をはじめ、多くの特徴が2割台と横並びだ。

同世代の女性と比べ、特に「この点を尊敬する」といった決め手に欠けるのが特徴だ【図表1】。

(図表1)尊敬する上司の特徴(アスマーク作成)

尊敬する上司がいるかどうかで、よく聞く上司の口癖・フレーズの印象が変わるようだ。尊敬する上司がいる人は、日頃から上司に感謝やポジティブな言葉を掛けられている割合が多い。

【図表2】を見ると、「ありがとう」(45.0%)が突出して高く、「素晴らしい!さすが!」(19.6%)、「とりあえずやってみよう」(16.6%)と続く。

(図表2)上司の口癖・フレーズ:尊敬する上司の有無別(アスマーク作成)

しかし、尊敬する上司がいない人では、1位の「ありがとう」(14.8%)と、1割台しかなく、感謝やポジティブな言葉をあまりかけられないようだ。日頃から感謝や前向きな言葉掛けをすることが上司への尊敬につながっていると考えられる。

これをZ世代の若者に注目すると、男女差が大きく出ている【図表3】。

(図表3)性別・世代別の上司の口癖・フレーズ(アスマーク作成)

女性Z世代は感謝やほめ言葉がより強く印象に残るようで、女性Z世代は「ありがとう」(38.8%)が約4割とダントツに高く、ほかにも「いま忙しい?」(19.2%)、「とりあえずやってみよう」(18.3%)といった優しい言葉が上位に並ぶ。

ところが、男性Z世代は1位の「ありがとう」(22.8%)がやや高い割合だが、ほかの言葉は横並びで、特に突出して響く言葉がないようにみえる。

男性はバランスのいい上司、女性はコミュ力高い上司を尊敬する

J‐CASTニュースBiz編集部は調査を行なったアスマークの担当者に話を聞いた。

――尊敬する上司像が、Z世代でも男女の間でかなり違う点が驚きです。女性の場合は「親しみやすい」と「誰に対しても公平に接する」が4割台と突出して高く、「決断力・判断力がある」「話を聞いてくれる」の項目でも3割を超え、しっかりメリハリをつけて上司を評価しています。上司の良い点を学ぼうという真摯な態度がうかがえます。

ところが男性の場合、上位すべてが2割台と横並びです。上司を「この点が優れているから尊敬できる」と評価する態度があまり感じられず、上司に対して「どうでもいい」「教わることなどない」といった冷ややかな姿勢を感じますが、いかがでしょうか。

担当者 質問は「尊敬している上司に関して、当てはまるものすべて選んでください」という形式で聞いているのですが、Z世代男性のほとんどが複数の項目を選んでいます。

その点から見ると、Z世代男性は「どうでもいい」というより、人によって評価ポイントが違う。または、どこか1点に秀でている上司よりも、あれもこれもできる、バランスのいい上司を尊敬していると言えるのではと思います。

一方、女性はよりコミュニケーション能力の高さを評価していると取れます。今年5月8日に弊社が発表した「理想の上司像から見るZ世代部下との接し方」(※)でも、Z世代女性は細かくフォローしてくれる上司が理想との回答が多かったのですが、そのことと通じる部分がありそうです。

(※)自主調査『理想の上司像から見るZ世代部下との接し方』~Z世代男性の35%は「上司と飲みたい」? - Humap アスマークのHRサービス

(※参考)Z世代は意外に上司と飲むのが大好き! 誘い待つ彼ら取り込む秘訣...専門家がアドバイス「タイプの見極めを」(J-CASTニュースBiz)

当たり前の感謝を、当たり前にできる人だから尊敬される

――すると、上司としては、Z世代でも女性と男性では多少、言葉掛けを変えたほうが効果的と言うことでしょうか。

担当者 前回調査でも、Z世代女性は細かく仕事のフォローをしてくれる上司を好み、Z世代男性は仕事を任せてくれる上司を好む傾向が見えました。褒め言葉にも、この傾向が出ているように思えます。

女性には、「とりあえずやってみようか」とか「さすがだね」といった気遣いや頑張りを認めるような誉め言葉が、男性はただ単純に褒められるよりも「期待しているぞ」「信頼しているからな」といった全面的に任せるような言葉が印象に残るようです。

同じ褒めるにしても、ニュアンスを変えてみることで相手への響き方が違う可能性があるので、この部下はどちらの褒められ方がより嬉しいのだろうと、言い方を変えて試してみるのもいいかもしれません。

――それにしても、なぜ「ありがとう」が圧倒的な1位なのでしょうか。個人的には「さすが! 素晴らしい!」のほうがグッと響く気がすると思いますが。

担当者 私も結果を見た時、正直、「ありがとう」って当たり前すぎるなあと感じてしまいました。しかし調査では、「上司に言われて嬉しいと感じたフレーズ」ではなく、「あなたの上司がよく言う言葉はどれ?」という聞き方をしました。

これは、尊敬される上司からは「ありがとう」とよく言われるけれど、尊敬されていない上司は「ありがとう」さえ言えていない、あるいは言ってくれない結果ととれます。

「ありがとう」は、おっしゃる通り当たり前の言葉なのですが、当たり前の感謝を当たり前にできる人だからこそ尊敬されるのかなと感じました。

――しかし、自分を尊敬していない部下に「ありがとう」と言っても効果は3分の1だと、空しくなりませんか。

担当者 それは少し違います。そもそも尊敬されていない上司は「ありがとう」という回数が少ないのだと思われます。

「ありがとう」と言えば尊敬される確率があがる、とまでは言えませんが、なんとなく部下から尊敬されてない気がする...と思ったら、さりげない「ありがとう」から始めてみるのもいいかもしれません。

上司になり、責任も重く仕事も忙しくなると、つい部下への感謝を忘れてしまいがちです。「仕事だからやって当たり前」とか「わざわざ口に出さなくても伝わっている」などと考えるようになると、尊敬できない上司になってしまうと思います。

偉くなっても、当たり前の感謝や人としての礼儀を忘れないことが大切なのではないでしょうか。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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