世界の死刑執行、昨年は過去8年で最多 イランで急増=アムネスティ報告

2023年に世界で記録された死刑の執行件数が、過去8年で最多となったことが、人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル」の調査で明らかになった。複数の中東国で執行が急増したという。

同団体が毎年発表している報告書によると、昨年は16カ国で1153人が処刑された。これは、2022年から30%の増加だ。

うち74%がイランで行われており、特に薬物関連での死刑が増した。サウジアラビアは15%を占め、2番目に多かった。

この報告に中国は含まれていない。中国では年間数千人が処刑されていると考えられている。

アムネスティ・インターナショナルは、「秘密性の高い国家のため、アムネスティのデータには依然として、世界有数の死刑執行国である中国で処刑されたと思われる数千人は含まれていない」と説明した。

「アムネスティは同様に、死刑を広範に行っているとみられる北朝鮮やヴェトナムの数値も含めることができなかった」

昨年の合計人数は、2015年以降のアムネスティの記録で最多だ。同年には1634人が処刑されたことが確認されている。

死刑執行した国は過去最少に

アムネスティによれば、イランでは昨年少なくとも853人が死刑に処され、2022年の576人、2021年の314人を上回った。昨年の死刑執行の半数以上は、薬物関連の犯罪を受けたものだったという。

一方、世界の死刑執行件数は増加しているが、死刑を執行した国はこれまでで最も少なかった。2022年に死刑を執行していたベラルーシ、日本、ミャンマー、南スーダンでは、昨年は執行がなかった。

アムネスティのアニエス・カラマール事務局長は、「死刑執行件数の大幅な増加は、主にイランによるものだ」と指摘。

「イラン当局は、人命を完全に軽視し、薬物関連犯罪の死刑執行を強化した。これにより、イランで最も社会から疎外され、貧困にあえぐコミュニティーに対する死刑制度の差別的影響が、さらに浮き彫りになった」と述べた。

対照的に、パキスタンは昨年、薬物犯罪に対する死刑を廃止し、マレーシアでは強制死刑が廃止された。

アジアではこのほか、スリランカ当局が、大統領が死刑執行令状に署名する意思がないことを確認。死刑を再開するのではないかという懸念を払拭した。

アメリカでも増加

アムネスティはまた、西側先進国で唯一、死刑制度が残っているアメリカの数字も取り上げた。

アメリカの昨年の死刑執行件数は、2022年の18件から24件に増加した。アイダホ州とテネシー州では銃殺刑の法案が提出されほか、モンタナ州議会では、薬物注射による死刑に使用する薬物の範囲を拡大する法案が審議された。サウスカロライナ州では、死刑執行の準備や実行に関与する人物や団体の身元を隠すための新しい法律が施行された。

また、アラバマ州では今年1月、アメリカ初の窒素吸入による死刑が執行された。

アムネスティのカラマード氏は、この方法を 「残酷」で 「未検証」だと述べ、「バイデン大統領は、連邦レベルの死刑廃止の約束を先延ばしにするのをやめるべきだ」と付け加えた。

(英語記事 Iran fuels 2023 global executions rise - Amnesty

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