今永昇太“無双投球”を呼んだ恩師・ラミレスが明かす金言「メジャーでベストフレンドになるべき“相手”」

新人時代から目をかけていたラミレス氏の期待に応えるように、今永は2017年に11勝で、日本シリーズ進出に貢献

「投げる哲学者」が世界中に名を轟かせている。

今季からメジャーリーグ(MLB)のカブスに入団した今永昇太(30)は、完璧すぎるスタートを切った。

「5月1日の6登板めで、早くもデビュー5連勝を達成。そこから勝ち星では、少し足踏みをしましたが、投球内容自体は好投が続き、5月22日時点で5勝0敗、防御率0.84の成績が評価され、MLB公式サイトから『メジャーNo.1先発投手』に選出される偉業も達成しています。このままいけば、日本人初の『サイ・ヤング賞』受賞の期待も高いです」(スポーツ紙記者)

ドジャースの大谷翔平(29)が「打」で貫禄を見せるなか、今永も「投」で、日本球界の実力を見せつけている状態だ。

「かりに、僕が現役時代に対戦したら、10打数2安打くらいでしょう。そして、7三振は取られていると思うし、ヒット2本も振り遅れてライト前に落ちて……だと思いますよ(笑)」

少しうれしそうに、こう話すのは、横浜DeNAベイスターズ前監督のアレックス・ラミレス氏(49)だ。

2015年10月19日に、ラミレス氏のDeNA監督への就任が発表されたが、その3日後におこなわれたドラフト会議で、初めて“ラミレス監督”が1位指名した選手が今永だった。

「今永に『メジャーで通用する能力がある』と伝えたことはありましたが、さすがに監督の僕に『メジャーに行きたい』と面と向かって言ってくることはありませんでした(笑)。

ただ、昨季終盤の今永からは、その気持ちが強く見えましたね。メジャースカウトにも思いが伝わり、カブスと複数年契約ができたことで、いまは自信を持って投げているように見えます。

投げている球種やストレートの速さは日本時代と大きく変わっていないなかで、結果が残せているのは、その部分が大きいと思います」(同前)

NHKのMLB中継で解説を務める武田一浩氏は、今永の飛躍について、理由は投球スタイルにあると指摘する。

「メジャーでは2年ほど前から『速いストレートは低めに投げない』という流行りがあるんです。低めが得意な打者が多いために、とらえられやすく、反対に高めの速球は効果的。

ドジャースの山本由伸は開幕当初に、低めに投げて打たれる場面があったのに対し、今永はよく勉強しており、初めから“メジャー流の投球”をしていたんです」

じつは、その碩学(せきがく)ぶりに大きな影響を与えたのが、ラミレス氏だったのかもしれない。2020年シーズンをもってDeNAの監督から離れたラミレス氏だが、今永との絆はその後も続いていた。

2023年11月、ポスティングでのメジャー挑戦を表明した後、今永と食事をする機会があったという。

「まだ、カブスとの契約が決まっていませんでしたが、彼としてはいろいろと聞きたいことがあったみたいです。

僕自身の経験から、いちばん大切なこととして『メジャーにはどの球団にも分析のスペシャリストがいるから、その人と“ベストフレンド”になるべきだ。初めての環境で、初めての相手に投げるんだから、とにかく分析スタッフにいろいろな質問をして、仲よくなりなさい』とアドバイスしました。

もともと今永は相手を分析したり、弱点を見つけることで、長いキャリアで成功できる“賢い投手”だと思っていました」(ラミレス氏)

その“金言”の成果か、今永はメジャー初登板から6回9奪三振の無失点ピッチングで初勝利を挙げると、4月のナ・リーグにおける「ルーキー・オブ・ザ・マンス」を受賞した。

ラミレス氏が続ける。

「初登板の後に連絡をしました。『おめでとう。この調子でがんばってね。今季、応援に行けたら行くよ』と伝えると、『ぜひ待ってます』と返ってきました。

彼も人間なので、絶好調が続くと相手を甘く見てしまうことがあるかもしれない。そこだけが少し心配です。2023年の食事会では、彼に『12勝はできる』と伝えました。早くそこに到達してほしいです」

恩師らしく、冷静に“次のステップ”への助言を投げかけたラミレス氏。だが、取材中は、どこか誇らしげだった。

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