多様性尊重のまちづくりとたばこ税(下)手厚い助成で民間協力の公衆喫煙所設置拡充を

(千代田区HPから)

総務省から全国の自治体の首長(都道府県知事と指定都市市長)あてに4月1日付で一通の通知が送られた。「地方たばこ税の安定的な確保と望まない受動喫煙対策の推進のための分煙施設の整備促進について」というものだ。

分煙施設の整備については、総務省自治税務局事務連絡などでここ数年、毎年通知されているが、今年は注目すべき記述がある。「民間事業者等への助成制度の創設」という一文だ。

<設置場所の確保が困難などの事情により地方団体が自ら設置及び運営を行うことが難しい場合、地方団体においては、民間事業者等が実施する屋内外の分煙施設の整備に対して助成を行うことで、分煙施設の整備を進めている事例があります。このように、民間事業者等への助成制度を創設し制度の適切な周知を実施することも分煙施設の整備に有効な取組であると考えられるため、助成制度の創設についてもご検討をお願いいたします>としているのだ。

さらに、令和6年度からは<民間事業者等が行う屋外分煙施設の整備に対する助成に要する経費>として事業費の2分の1を上限として、特別交付税の措置の対象に追加するとしている。自治体の財政負担を軽減しようというものだ。

■設備設置費用だけでなく賃料はメンテ費用のケアが必要

実際、東京23区内でも大阪市内でも、自治体が公衆喫煙所を設置しようにも、再開発が進む都心部などでは設置場所を確保することが物理的にも資金的にも困難となっている。そこで、民間事業者にビルの一角に公衆喫煙所を設置してもらい、その設置費用や運営費用、賃料などを補助するという制度が23区内や大阪市などで実施され、少しずつ効果を上げてきている。

最も知られている例としては東京・千代田区の「公衆喫煙所設置助成事業」がある。喫煙所の新規設置に係る工事等の経費について700万円を上限として助成。運営開始から5年経過後、設備の修繕・取り換えに係る経費として300万円を上限として助成するという内容だ。

また、注目すべきは維持管理経費として、喫煙所の運営に係る経費(賃料、水道光熱費など)について年間264万円を上限として助成するという手厚い内容だ(賃料については清掃費や水道光熱費などが含まれる場合は100%、それ以外は80%の助成)。

もちろん、自治体の財政基盤はピンからキリまであり、民間主導の分煙施設設置への助成までは予算を捻出できないという自治体もあるだろう。しかし、今連載1回目で示したように都内23区の自治体に関していえば、平均して35億円ほどの特別区たばこ税収がある。そのうちの5%程度を助成制度の予算に計上すれば約1億7500万円となり、年間で数十カ所の分煙施設設置が可能になるはずだ。

政府はたばこ税を防衛費増税の財源にと企んでいるようだが、とんでもない話。まずは身近なまちづくりにおける分煙環境整備に該当できるようすべきだ。納税者も声を上げていくべきだろう。

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