“排除”された元都庁幹部・澤章氏「小池都知事は臆病者。攻め込まれると過剰反応し失態を犯す」【小池百合子と学歴詐称】

元都庁幹部の澤章氏(C)日刊ゲンダイ

【小池百合子と学歴詐称】#7

澤章氏(元都庁幹部)

元都庁幹部の澤章氏は、小池百合子知事を間近で見てきたひとりだ。現役時代に澤氏が頭を悩ませたのは、旧築地市場の移転問題である。小池は2016年の初当選の直後、移転延期を決定。紆余曲折の末、結局、2年遅れで豊洲市場への移転に至った。澤氏はその間の混迷を著書「築地と豊洲」で暴露するや、都の関連団体理事長の職を解かれたのだった。逆らったが故に「排除」された澤氏の目に、小池元側近・小島敏郎氏の告発はどう映っているのか。

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「16年夏に都の特別顧問に就任した小島さんとは現役時代に直接対峙し、ドンパチやっていた間柄です。市場移転問題では、我々役人が豊洲市場への移転を進めているのに、小池知事の意をくんだ小島さんが『ダメだ』とストップをかける。あれほど小池知事ベッタリだった小島さんが暴露したわけです。小池知事は結局、身内であっても最終的には裏切られ、人が離れていく人物なんだと改めて感じました」

手のひらを返された原因は小池自身にある。

「小島さんは17年に特別顧問を辞職した後、小池知事率いる『都民ファーストの会』の事務総長に就任。聞いた話では、小島さんは、徐々に都ファの都議と軋轢が生じていき、最終的に仲たがいした。小池知事も都ファの都議らと同様に小島さんを疎ましく感じるようになったのでしょう。自らを利する人材は処遇する一方、役立たずになると冷徹に切り捨てるような人ですから、飼い犬に手を噛まれたということだと思います」

「機を見るに敏」と評される小池だが、学歴詐称疑惑の“隠蔽工作”を暴露されてしまう展開は読み切れなかったのか。

「小池知事は世間の風をいち早く察知して動いているように見えますが、意外と臆病者。攻め込まれると過剰反応し、結構な失態を犯しています。今回の告発では、4年前に持ち上がった学歴詐称疑惑を巡る騒動を沈静化するため、駐日エジプト大使館に泣きついたことが分かりました。そんなドタバタを演じず『卒業してます』と居直っていれば、告発されることもなかったわけですよね」

今年3月に豊洲市場の隣で開業した商業施設「豊洲 千客万来」を巡っては、こんな騒動があったという。

「豊洲か築地かと市場の移転が世間の関心を集めていた17年6月、小池知事は市場移転に関する基本方針として『築地は守る、豊洲を生かす』というフレーズを会見で発表しました。その時、思い付きだったのか『築地に食のテーマパークをつくる』と言ってしまった。そこに反応したのが、当時、千客万来の事業予定者だった旅館業の『万葉倶楽部』でした」

大枚をはたいて投資し、豊洲に娯楽施設をつくることが契約で決まっていたのに、たった2キロしか離れていない築地で同じような商業施設をつくるなんて冗談じゃない、と激怒したのだ。

■「自民党の罠だ」

「万葉倶楽部は『我々は撤退する。場合によっては訴訟も辞さない』と都庁に伝えてくるなど、大ごとになってしまった。すると小池知事は何を血迷ったのか、『誰かが自分の足を引っ張ろうとしている。これは恐らく自民党関係者の罠だ』と大真面目で言い始めたのです。確かに政治家が裏で仕組んでいたこともあるかもしれませんが、その種をまいたのは小池知事本人です。存在しない敵を自分の中でつくり、疑心暗鬼に陥ってしまった。今回の告発も、小島さんの裏に誰かがいると思っているのかもしれません」

(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)

▽澤章(さわ・あきら) 1958年、長崎生まれ。一橋大学経済学部卒。86年、東京都庁入庁。総務局人事部人事課長、中央卸売市場次長などを歴任。2019年、都の政策連携団体「東京都環境公社」理事長。20年に小池知事や市場移転問題に関する告発本「築地と豊洲」を出版し、当時の副知事から求められ理事長を退任。

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