【コラム・天風録】平和でクリーンな宇宙へ

 くらしを守る「宇宙の目」といったところか。来月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げる地球観測衛星「だいち4号」。今も上空を回る2号の後継機だ。3号をH3ロケット打ち上げ失敗で失っただけに、今回は軌道に乗せたい▲そのレーダーは2号の4倍に当たる幅200キロを雨や夜でも観測できる。災害が起きた際に状況を詳細に把握でき、人命救助に役立つ。また火山活動や地滑りといった異変を早めに見つけられれば「減災」につながる▲国際的な貢献も期待されている。同じくロケット爆発に見舞われた北朝鮮も衛星打ち上げにこだわるが、日本が目指すのは軍事偵察衛星とは大きく異なる。秋に宇宙へと投入する人工衛星もそう▲世界初の木造衛星だ。1辺約10センチの四角い箱は太陽電池パネルが付くものの、本体はホオノキ製である。ひずみや温度を測り、宇宙空間での木材利用へデータを集める。何といっても特徴は、大気圏で燃え尽きること▲くぎやねじを使わない日本の伝統技法で組んだ。金属の衛星と違い、有害物質を出さない。話題となった下町ロケット風にいえば、「伝統工芸衛星」か。宇宙空間は平和かつクリーンに保つ努力を。

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