米大手資産運用会社の調査で判明…株主総会での「議決権の行使」が「株価」に与える“無視できない”影響【アライアンス・バーンスタイン】

(※写真はイメージです/PIXTA)

以前から「企業のガバナンス改善」は株価の上昇に深く関係すると考えられてきました。そのようななか、米国の大手資産運用会社であるアライアンス・バーンスタイン(以下「AB」)が、企業のガバナンス改善を測る指標のひとつである「議決権の行使」に焦点をあてて、株価への影響を調査しました。詳しくみていきましょう。

コーポレート・ガバナンスと株式リターンの相関関係

企業のガバナンスと株式リターンに相関関係があることが明らかになってきました。

たとえば、ハーバード・ロー・スクールの教授らが6つの主要なガバナンス規定で策定した指数からは、1990年から2003年までの米国株式において指数上の評価が低いほど企業価値が低下し、リターンも低下することが分かっています。

最近のS&Pグローバルの調査でも、ダウ・ジョーンズ指数のガバナンス・スコアが下位4分の1にある企業は、上位5分の1の企業に比べ、年率換算で約2%パフォーマンスが下回っているという結果が生じています。

コーポレート・ガバナンスが不十分な企業は経営不振に陥りやすく、収益も低迷しやすいというイメージは、投資家にとっても、想像にたやすいものです。

では、現実はどうなのか。私たちは、株主総会における「議決権の行使」に着目して、詳細な調査を進めました。議決権の行使は、株主が企業の経営、特にガバナンスの良し悪しに関する意見を伝える有効な手段の一つです。

ガバナンスの評価は各社一律にできるものではありません。私たちは、独自の議決権行使方針の活用に加え、アナリストの専門知識やエンゲージメントを活用した共同レビューを行っています。こうしたアプローチを取ることで、その企業ならではのファンダメンタルズに関する知見を取り入れつつ、長期的な改善を後押しするための建設的な議決権行使を実施できると考えています。

私たちの議決権行使の実績と企業収益の間に同じような関係性があるかどうかを調査した結果、株主総会のさまざまな議案で経営陣に反対票を投じた企業の平均的な業績は、私たちが強力に賛同した企業の業績に比べ、下回っていたことが判明しました。具体的なアプローチについて紹介します。

反対票数0の企業の「平均年間株式リターン」は他社の2倍に

私たちは、2018年から2022年にかけて、グローバル企業全体で、266,000件以上の個別議案に対して議決権行使が行われた約34,000件の株主総会を追跡調査しました。そして、それぞれの議決権行使と、翌年の当該企業の株式リターンとを対比しました。

具体的にはVAM(Votes Against Management)と呼ぶ反対票数に基づき、経営陣との連携度合いを分類しました。たとえばVAMが1の場合は、株主総会で企業側から 出された議案のどれかひとつに反対票が投じられたことを意味します。

調査期間中に開催された株主総会でVAMがゼロであったのは45%でした。つまり半数以上の株主総会で企業側の提案に反対したことを意味します。

VAMがゼロの企業(ABが全ての議案に賛成した企業)は、他の企業よりも年間250ベーシス・ポイント以上高い株価パフォーマンスを示していることが判明しました。こうした傾向は大半のセクターの同規模同業他社間で確認されています。

さらには、5年間のスパンで見た場合、VAMがゼロの企業の平均年間株式リターンは、VAMが3つ以上ある企業群と比べ約2倍の11.5%になっています【図表】。

【図表】ガバナンスが充実している企業の株式リターンは高い傾向 ※出所:アライアンス・バーンスタイン株式会社

私たちは、ファンドマネージャーやアナリストによる日頃からの経営陣とのエンゲージメントを通じて、企業価値向上のためによりよい経営が行われるよう、さまざまな働きかけを行っています。株主総会の議案として俎上(そじょう)にあがる前から経営改善を促し、会社のガバナンスが数年にわたり問題になっている場合などは、エンゲージメントの強化や株主提案を検討することもあります。

アクティブ運用の根幹は、エンゲージメントを通じて資本戦略や経営戦略などに能動的に関与していくことで、企業価値を協創し、株価パフォーマンスに資すること。特にガバナンスに関しては、熟慮を重ねた議決権行使だけでなく、エンゲージメントを行うことで、リーダーシップや情報開示、報酬、資本政策に至るまで、重要な経営判断にプラスの影響を与えることが可能だと考えています。

臼井 はるな

アライアンス・バーンスタイン株式会社

責任投資ヘッド

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