「うちにも来た」 悪質な詐欺業者の出没に注意喚起 「屋根に登らせたら終わり」のワケ

自分ではなかなか確認できない屋根(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

「屋根が大変なことに」――突然やってきた業者にそう言われたらどうしますか? 屋根の劣化はすぐに判断するのが難しく、近年は自然災害も多いため、そうした心配につけ込んだ詐欺の被害が多発しています。X(ツイッター)では、近所の被害を未然に防ぎ、注意を呼びかける投稿が大きな話題に。投稿者のツボイ塗工@建物に再び命を吹き込むスーパーペイント(@tsuboi_toko)さんに、詳しい話を伺いました。

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「一般の方には見分けがつかない」

近隣で作業している工事事業者を装い、「屋根の瓦が壊れているのが見えた」「釘が抜けている」などの言葉で不安を煽って屋根に上がらせてほしいと持ちかける、「点検商法」と呼ばれる詐欺が発生しています。

今回「屋根詐欺業者出没」という書き出しで、実際に近所で目撃した様子をXに投稿したのは、外壁塗装のプロであるツボイ塗工さん。添えられた2枚の写真には、近所の人に話しかける男性が写っています。場所は住宅街の一角です。

投稿によると、訪ねてきた男性は、作業着に真新しい地下足袋履きという、本物の職人さんかどうか「一般の方には見分けがつかない」服装です。作業中に男性の様子が目に入ったツボイ塗工さんは作業の手を止めて状況を見守り、被害に遭っていないかを確かめるため、男性が立ち去ってからこのお宅を訪問しました。

どんな対応をしたのか確認したところ、やはり詐欺の手口。幸いなことに「考えておくわね」と言って帰していたそうで、被害は起きていませんでした。投稿では、このときの状況と合わせて詳しい手口や対処法、「屋根に登らせたらもう終わりです」など、訪れた先で説明した内容を克明に綴っています。

「うちにも2回来ました」「80万円払っていました」

この投稿が公開されると、実践的な注意喚起とアドバイスが反響を呼び、4.5万件もの“いいね”が集まりました。リプライ(返信)には「うちにも2回来ました」「うちにも来たなぁ。親方に言われたからって。『その親方連れてこい!』って言ったら逃げていきました」「うちは家が古いのでたまに来ますね」など、詐欺に接触された人たちの声が多く寄せられています。

なかには「私の母80歳がこれに引っかかり80万円払っていました」といった、被害に遭ってしまった報告も。

一方で「おばあちゃん宅でごはん食べていたら、うちにも来ました。『屋根(瓦)の一部が浮き上がっているよ』と言われ、許可なくはしごをかけて登ったので、降りられないようはずしてあげました。その後、警察に通報し壊されたところがないか確認。一応、建築関係なのでキッチリ調べて被害届出しました!!」など、実際の撃退エピソードも数多く寄せられています。

家の前で住人に話をする怪しい作業着姿の男性【写真提供:ツボイ塗工@建物に再び命を吹き込むスーパーペイント(@tsuboi_toko)さん】

詐欺師や悪質業者が巧みに使う注意すべきフレーズ

ツボイ塗工さんによると、「この日、作業していた施工主様から『変な業者が来た』という報告」があったそう。現場近隣で詐欺業者の出没が多発していたといい、近所の人に写真の許可ももらえたことから、注意喚起とともに投稿したと話します。

ツボイ塗工さんは「複数人で建物を眺めながら舐め回すように見て回るのも特徴です。素人が行う場合と訪問販売業者がやる場合の2つがあり、いずれも非常に増えています」と語り、詐欺師や悪質業者が口にする状況別のフレーズを教えてくれました。

○詐欺師や悪質業者が訪問時に言いがちな言葉
・屋根が大変なことに
・釘が抜けている
・棟板金がはがれている
・棟板金がパカパカしている
・屋根がはがれている
・屋根が浮いている
・屋根が割れている
・瓦がずれている

○詐欺師や悪質業者が不安を煽るために使う言葉
・今すぐ直さないと大変なことに
・雨漏りする可能性がある
・すでに雨漏りしている

○詐欺師や悪質業者が契約をさせるためにたたみかける言葉
・今ならすぐできる
・はしごがあるから点検できる
・点検だけなら数万円

こうした誘いに乗ってしまい、屋根に上がるのを許してしまうとどうなるのでしょうか。

「壊れていない屋根を直すふりをして壊す。壊した状態の写真を撮るなどして、『簡易的な直しではダメだ。今すぐ葺き替えが必要』と高額工事を煽り、契約を迫ります。服に忍ばせた事前に用意したかけらを見せて、『ほらこれです』などと言う例もあります」

「突然来た業者の言葉は一切信用しない」が大事

今回の反響で、こうした被害は都心部だけではなく、全国で起きていることを実感したというツボイ塗工さん。大切な家を守り、被害を防ぐためには「まずは知らない人、突然来た業者の言葉は一切信用しないこと」が大事だといいます。

もし詐欺師や悪質業者が自宅に来たら、「友人に建築家がいてお任せしているから、そちらに診てもらう」などと言って追い返すのが一番なのだとか。また、それでも居座る場合は不法侵入で警察に通報する、その素振りをするのも有効だそうです。さらに、セールスお断りの札やカメラ付きインターホン、防犯カメラも一定の抑止力になると、今回の反響を通じて知ることができたと語りました。

投稿でもツボイ塗工さんが呼びかけているように、こうした犯罪に巻き込まれそうになったときには警察への通報のほか、国民生活センターや住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」があります。騙されないよう詐欺の手口を知るだけでなく、万が一のときのためクーリングオフの方法を把握しておくなど、正しい知識を持つことで被害を防ぎたいですね。

◇ツボイ塗工 ホームページ
https://www.tsuboi-toko.net/
◇ツボイ塗工 インスタグラムアカウント
tsuboi_toko

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