大宮・浦和のおすすめ居酒屋6選。日本酒沼に手招きする、名店から新鋭まで

32の酒蔵があり、実は日本酒どころの埼玉県。大宮・浦和にも日本酒文化を大切にするお店が多く、最近は立ち飲みやスパイス×燗(かん)を提案する新店も登場!
各店際立つ個性があるので、日本酒ラバーなら全軒訪問を推奨します!

『ヨリミチ』燗酒とスパイスの越境ペアリング[大宮]

夜はカウンター6席に絞って営業。

客がセルフでお燗できるお燗場の設置をはじめ、店主・史路(ふみじ)さんの日本酒LOVEが随所に。
「ぜんぶ半合550円なのは、自分の愛するお酒たちに価格差を付けられないから!」。スパイス料理とのペアリングがウリで、この日はクミン香るラム肉のキョフテ(トルコ風肉団子)で、熟成酒の燗を提案。一方隣には「このラベルかわいい~」と、日本酒ビギナーの若き女性客の姿もあり、お店の門戸の広さを実感。

キョフテ1100円(手前)、モロッコの焼きナスとトマトのスパイス煮込み、ザアルーク660円。
シナモンやグローブを使ったスパイスチョコケーキ660円は熟味のあるお酒と。
「POST OMIYA」の一画で営業中。

こんな銘柄揃えています

リストは置かず、客の好みや料理との相性で提案する。入門編として香り華やかな冷酒から、「天穏」などゆるりと飲める燗映え銘柄、スパイス料理に合う酸味のある熟成タイプまで約80種。

『ヨリミチ』店舗詳細

ヨリミチ 住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-491-2 POST OMIYA 102/営業時間:11:30~15:00・17:00~22:00(日は12:00~20:00)/定休日:水(不定休あり)/アクセス:JR各線・私鉄大宮駅から徒歩8分

『海鮮酒場わんす』鮮魚と厳選地酒の無限ループ[南浦和]

天使の海老などが並んだ特選盛1人前1280円(写真は2人前)、きんき姿煮2980円、ブラッドオレンジ・土佐文旦の白和え800円。

この日の魚は塩釜の本マグロに岩手のナメタガレイ、対馬のノドグロと、字面だけで喉が鳴る。「浦和卸売市場の方との信頼関係で、いい魚も比較的安く仕入れられるんです」と代表の漆原弘了(うるしはらひろのり)さん。魚と同じく鮮度を大事にする日本酒は、あえて6~7種に厳選し提供。スダチを搾った生たこ刺はフルーティーな「花陽浴(はなあび)」が合うし、きんき姿煮のふっくらとした身は力強いうまみの「浪乃音」が最高の相棒に!

漆原さん(右)と店主の大島一仁さん。

こんな銘柄揃えています

魚介に寄り添う品揃え。香りがありつつ後味すっきりのタイプと、煮魚などに合うどっしりタイプがおおよそ4対2の割合で半合700円均一。一部1000円で「射美(いび)」や「新政」など希少銘柄も。

『海鮮酒場わんす』店舗詳細

海鮮酒場わんす 住所:埼玉県さいたま市南区南浦和2-41-20 1F/営業時間:17:00~24:00(金は~翌1:00、土は16:00~翌1:00、日は15:00~22:00)/定休日:無/アクセス:JR京浜東北線・武蔵野線南浦和駅から徒歩4分

『日本酒ダイニング 栄三郎』3世紀を超えて紡がれる日本酒物語[浦和]

塩で味わうカツオの土佐造り1000円。丁寧に下処理し、ニンニクを使わない自家製もつ煮込み700円。

「初代が240年ほど前に造り酒屋を開業。父の代は酒販店をしていたんです」と9代目の田中昇さん。昇さんは21歳のときに飲んだ「〆張鶴」に衝撃を受け、新潟県村上にある蔵を訪問。以来四十数年、杯を重ねた昇さんが選ぶのは、料理をひきたてる純米の食中酒。干し柿バター500円やタコチイ(タコのうま煮とチーズ)550円など考え抜かれた酒肴の数々は、熟成酒の燗か、酸のある生原酒を冷酒でいくか悩む!

お酒選びに迷ったら昇さんが料理に合うものを教えてくれる。
家族3人で切り盛り。

こんな銘柄揃えています

北陸の酒を中心に、純米酒が50~60種ほど。定番は「勝駒」「東光」「雪の茅舎」など。埼玉の地酒も「釜屋新八」「九重桜」ほか5種ほど用意する。75㎖で400~500円程度。

『日本酒ダイニング 栄三郎』店舗詳細

日本酒ダイニング 栄三郎 住所:埼玉県さいたま市浦和区岸町3-15-12 調ハイム1F/営業時間:11:00~13:30LO・16:00~21:30LO(日は11:00~19:30LO)/定休日:月・火/アクセス:JR浦和駅から徒歩13分

『立ち呑みソメアカ』袖ふれ合うも盃の縁[浦和]

AとB、2パターンの3種盛りを選べる刺盛らず500円。この日のBは天然ブリ、アジなど。サバを焼く嫁串300円、アラ煮込み豆腐350円。

「仕事帰りに2、3000円握りしめて、気軽に日本酒を飲める店にしたかったんです」と店長の渡邊友久さん。大宮市場で毎日仕入れる鮮魚の刺し身や和牛の炙(あぶ)り、アラ煮込み豆腐までつまみは基本500円以下で、冷蔵庫を自由に開けて日本酒を選べるざっくばらんな空気が楽しい。2023年秋の開店から早くも千客万来で「そのイカうまそう」「お隣の日本酒、こっちにも!」なんて客同士の距離感の近さも醍醐味。

浦和の立ち飲み『モルガン』の兄弟店として開店。

こんな銘柄揃えています

すっきり辛口から米の旨味のあるものまで、日本酒好きの店長が15種ほどチョイス。「あべ」ピンク純米吟醸生原酒など肉に合うものも。半合350~550円で提供し、燗にも対応。

『立ち呑みソメアカ』店舗詳細

立ち呑みソメアカ 住所:埼玉県さいたま市浦和区仲町1-3-4 セヒョンビル2F/営業時間:17:00~23:00/定休日:火・水/アクセス:JR浦和駅から徒歩5分

『蔵元直送 埼玉の地酒処 うりんぼう』埼玉地酒の名店が発酵食に開眼[大宮]

蔵に通い、杜氏の人柄にまで詳しい店主。「埼玉野菜&発酵づくしコースもぜひ!」。

2005年の開業時に、埼玉の酒蔵36軒を巡った佐藤紀子さん。「おいしい温度帯が広く、主張が控えめで食事に合う酒質に魅力を感じ、扱う日本酒はすべて埼玉県産と決めました」。2022年に移転してからは、自家製発酵調味料による発酵食に注力。発酵ゆずシロップのラペや秩父えのき醬油麹なめたけなど、どれもお酒の名脇役に。砂糖を使わない自然な甘さの発酵あんこで、燗酒をゆるゆる飲む幸せときたら。

彩たまごの醤油麹・赤酢漬けなどが並ぶ麹酒肴3点盛700円、発酵納豆麹550円、発酵あんこ600円。

こんな銘柄揃えています

「釜屋新八」「寒梅」、酒造りを毎年手伝う「菊泉」など定番4蔵に、時々加わる蔵が5蔵ほど。すべて蔵から直接仕入れている。120㎖ 550~800円、お燗は150㎖からプラス50円で提供。

『蔵元直送 埼玉の地酒処 うりんぼう』店舗詳細

蔵元直送 埼玉の地酒処 うりんぼう 住所:埼玉県さいたま市大宮区宮町4-107-1 2F/営業時間:17:00~21:15LO/定休日:日・祝/アクセス:JR各線・私鉄大宮駅から徒歩8分

『和酒処 さなぶり』浦和日本酒酒場のゴッドファーザー[浦和]

カウンター9席で1組3名まで。店奥には酒造りの神様・松尾大社と三輪大神を祭る神棚が。

界隈の酒場店主らからもリスペクトを集める、日本酒専門店のパイオニア。「お酒の好みは百人百様。酒質も地域もバランスよく揃えています」。フレッシュな生酒から熟成酒まで懐広いラインナップながら、機を見て「悦凱陣(よろこびがいじん)」を飛び切り燗で勧めるなど、お燗愛もちらり。旨味を凝縮させた汐うに550円をアテに飲めば、思わず「くぅ~」。渋い雰囲気も相まって、日本酒とじっくり向き合いたくなる。

杉玉が目印。
大穴子の一夜干し900円、牡蠣味噌クリームチーズ650円など、ザ・酒肴の数々。
全国の酒蔵を巡ってきた店主。

こんな銘柄揃えています

品書きは地域や燗酒・新酒・生酒などジャンル別に並んでおり、分かりやすい。開業以来の定番「勝駒」「悦凱陣」をはじめ最大40種ほど。半合600円前後がおもな価格帯。

『和酒処 さなぶり』店舗詳細

和酒処 さなぶり 住所:埼玉県さいたま市浦和区東高砂町3-5/営業時間:17:00~22:30LO/定休日:火(不定休あり)/アクセス:JR浦和駅から徒歩3分

取材・文=鈴木健太 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2024年5月号より

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