首都圏向け 茨城県、農産物の営業加速 シェフ招き視察も ブランド強化と販路拡大

なだろうレッドを使用したケーキを持つラ・テールの栗原清商品開発部長=東京都内

茨城県が、首都圏の高級ホテルや飲食店に対する県産農水産物の営業活動を加速させている。ブランド強化と販路拡大が大きな狙い。新型コロナウイルスの影響がひとまず一段落し、シェフやパティシエを県内産地に招いた視察や、生産者との意見交換を活発化させている。

5月10日、東京都世田谷区の人気洋菓子店「ラ・テール洋菓子店」で、茨城県鉾田市産の「なだろうレッド」を使用したケーキが販売された。同店は毎月10日を「サンクス・デー」とし、1日限定のケーキを製造している。この日はメイン食材に、JAほこたのオリジナル品種を選んだ。約60個の予約が入ったという。

同店の運営会社「ラ・テール」の栗原清商品開発部長(48)は「生産者から栽培のこだわりを聞き、ぜひ手をかけて育てられたメロンを使いたいと思った」と語る。県からの紹介でなだろうレッドを知り、産地の視察に乗り出した。4月上旬、県職員らと同市の農家を訪れて栽培方法などを聞き、同店のケーキに使用することを決めた。

店名はフランス語で「大地」を意味する。栗原部長は「その土地で育てられた地場産品を大切にしたい。今回を契機に、茨城県内のほかの生産者ともつながりたい」と力を込める。

県は銘柄牛「常陸牛」などを重点5品目として、大都市圏でのPRを強化している。営業では、茨城の農水産物をまとめた「いばらき食彩カタログ」を活用している。2022年以降、高級ホテル「横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ」で常陸牛のTボーンステーキが通年メニューに。ヒルトン東京お台場などでも、茨城の食材を使用したメニューが提供された。

県によると、23年度の取引斡旋(あっせん)は約400件に上った。県農産物販売課は、高級店が飼育、栽培方法のこだわりや、品種そのものに関する〝ストーリー性〟を重視していると分析。「本年度も積極的に営業活動をしていきたい」と意欲を示した。

メロンのほ場を視察する洋菓子店の商品開発責任者ら=鉾田市内(県提供)

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