“i☆Risにしかできないこと” 切り拓いてきた『声優』、そして『アイドル』の道

『声優』と『アイドル』、ふたつの活動を両立する5人組ユニット・i☆Ris。今年活動12年目を迎えるi☆Risだが、その活動形態はデビュー当時まだ前例がなく、声優として、アイドルとして、新しい活動のかたちを模索しながら、常にチャレンジに満ちた道のりを歩んできた。そして5/17には、i☆Ris自身が劇場アニメ化された作品、劇場版アニメ「i☆Ris the Movie - Full Energy !! -」が公開され、またも前例を見ないプロジェクトがスタートした。i☆Risのリーダー“さきさま”こと山北早紀、“わかちー”こと若井友希、そして株式会社エイベックス・アニメーションレーベルズでマネジメントを担当する松岡亮文が、i☆Risのこれまでを振り返り、今後の展望を語る。

ファーストペンギンとしての挑戦コンテンツとともに歩み、成長してきた12年

若井「当時は、声優でありアイドルでもあり、両方全力でやるっていう人たちがいなかったんですよ」

デビュー当時の自分たちが置かれた環境と、そのなかでの困惑を若井は笑顔で振り返る。

若井「だから、私たち自身も大変でしたけど、スタッフさんたちもみんな大変だったと思います。分からないなりに、みんなで手探りでやっていくようなスタートでした」

i☆Risが現在所属する、エイベックス・ピクチャーズ株式会社(以下API)が設立される以前、その前身となるエイベックス・エンタテインメント株式会社内のアニメ事業部という比較的小さな部署からプロジェクトはスタートする。”声優アイドルグループ”というこれまでにない形態でのデビューに熱意と期待が込められていた。

若井「右も左もわからないけど、“とにかく面白いことやってみようぜ”っていうエイベックスらしいパッションというか。そういう雰囲気は感じていました」

グループがデビューして2年が経つ頃、i☆Risは自分たちのあるべき姿のヒントをつかむ、最初の転機を迎える。

APIの関連作品であるTVアニメ『プリパラ』に、メンバー全員が声優のメインキャストとして参加、そしてオープニングテーマ曲をi☆Risが担当することになった。

山北「ようやく胸を張って“声優アイドル”と名乗れるようになったという気持ちでした。自分たちのあるべき姿がなんとなく見えてきた頃ですね」

松岡「i☆Risとしても少しずつ活動の反響に手応えを感じ始めていた時期で、会社の期待感としては『プリパラ』と一緒にi☆Risに成長していってほしいという思いがあったと思います」

この作品を通して、アニメコンテンツと“ともに歩んでいく”という進み方に、i☆Risは光明を見る。

松岡「アニメのタイアップというのは、当時はまだ今ほど重要視されていなかったと思います。でも、i☆Risはそれによってユニットとしての規模が飛躍的に大きくなりました。今ではアニメコンテンツなどとのタイアップは盛んに行われるようになりましたが、やはり会社としてヒットIPをつくるという観点でも、“声優・アーティスト単体ではなく、IP軸のユニット”という存在はとても大事なことだと思っています」

そしてなにより、コンテンツの力とのシナジーで、より広く、より深く感動を届けることができる。

松岡「やっぱりアニメの力ってすごいんですよ。i☆Risのメンバーがアニメのキャラクターとしてステージに立つこともあるんですが、i☆Risのライブとはまた別のパワーを感じます。そのキャラクターを通じてじゃないと出てこない特別な力があるんですよね」

親和性の高いコンテンツと、互いに魅力を掛け合わせながら、互いに可能性を広げていく。i☆Risはそんな歩み方を“手探り”のなかで探し当て、現在までひたすらに進んできた。

「今がいちばんいい」i☆Risの現在地と業界に与えた変化

アイドルとしては比較的長いとも言えるキャリア12年目を数えるi☆Risの5人。これまでの道のりを歩んできて、今だからこそ感じることもある。

若井「最近は、メンバーひとりひとりに対してリスペクトできるグループでありたい、という思いが強いです。『この子はココがすごい』って自信を持って言えるし、それがとても大事なことだと思っています」

山北「やっぱりそれなりに長い年月やってきて、みんな自分の基盤みたいなものがあるからか、これまでを振り返っても今のグループ内の空気がいちばんいいなと思っています。ただ仲良しでやっていきたいというだけではもちろんなくて、その時々に応じて常にパワーアップしていたいなと思いますね」

お互いのいいところを認め合うことで、のびのびと高め合っていける。これまで積み重ねた経験の豊かさは、声優・アイドルとして生きる心地のよさにも通じ、またi☆Risという場所が心の拠り所にもなっていく。

山北「最近はこれまで以上にi☆Risというグループに対してありがたみを感じるし、メンバーもそれを感じているのがわかります。メンバーひとりひとりに対して『続けてくれてありがとう』っていう気持ちも、最近うまれてきましたね」

山北はそれを「丸くなった」とも言うが、i☆Risはそうしてメンバー自身も少しずつ変化しながら、“パワーアップ”を重ねてきたのだ。では一方で、i☆Risという存在は声優・アイドル両業界に対してどんな変化をもたらしたのか。

若井「今はもう『声優アイドル』っていうジャンルができてきたかも」

松岡「ほんとにi☆Ris以降で、ぱっと数えても声優アイドルグループは10組くらいはあるかな? それに声優アイドルという形態でなくても、アイドルの方が声優をやったり、アニメのタイアップを担ったりということは増えていると思います」

山北「あとは、これだけ長く活動できているっていうこと自体、業界に対して刺激を与えられてるんじゃないかな、と思います。」

たしかに、とふたりも口を揃える。

山北「アイドルに声優を掛け合わせることで、より長く活動できるっていうのは.、21歳でオーディションを受けたときにもちょっと思ってました(笑)。それで10年くらい活動できたらな、って当時思っていたけど、もう12年も経ちましたね」

デビュー当初から前例のないことばかりで進んできた12年は、のちに続く者たちにとっては辿るべき道になった。しかし同時に、開拓者たるi☆Risはまた新たに前例のないことを始めている。アニメコンテンツとともに歩み成長してきた自分たち自身が「劇場版アニメになる」という大胆な企画だ——。

i☆Risだからこそできることを続けることで歴史に名を刻む存在に

劇場版アニメ「i☆Ris the Movie - Full Energy !! -」は、メンバー自身がアニメ化され、声優として自分自身を演じる、リアルとファンタジーが交錯する新感覚ムービー。i☆Risの活動10周年を記念するプロジェクトの集大成として、2024年5月、いよいよ全国の劇場で公開のはこびとなった。

(C)API・81P/Full Energy!!製作委員会

若井「プロジェクトが立ち上がる少し前に、会社とi☆Risでこれからどう頑張っていけるのか、役員の方々も交えて真剣に話し合ったことがあったんです。どうにか一緒に盛り上げていきたいし、アニメのタイアップも欲しいですって正直な気持ちを話したんですね。そしたら『わかった』って言ってくれて。数日後に来た話が『i☆Risをアニメ化しよう』って(笑)え、そうきたか!と」

一同は笑うが、そこにはAPIの並々ならぬ思いがあった。

若井「でもあとから、これはi☆Risとファンの絆として、記念として、いいものを残したいんだっていうすごく熱い気持ちを聞いて。i☆Risって愛されてるんだなっていうのがすごく嬉しくて、いい作品にしたいなと思いました」

山北「わたしも本当に同じ気持ちです。あとは、アニメ化されて2次元の山北早紀ってことは、永遠の若い肉体を手に入れたということで、よっしゃー!って気持ちも(笑)」

アイドルとしての自身の功績を、自分自身が声優として演じる。それは、とてもi☆Risらしい挑戦であった。

山北「わたしたち以外にはなかなかできないんじゃないかというくらい、i☆Risにぴったりの企画だったと思います」

松岡「まさにi☆Risにしかできないことですし、同時に、アニメ制作とマネジメントの両方の機能があるAPIにしかできない事業だったともいえると思います。チャレンジではありますが、アイドル自身が劇場アニメ化されて、声優としても自身が出演する作品というのを聞いたことがなかったので、これはやる価値があると考えていましたね」

そんなチャレンジをこれからも続けていくことの大切さを、松岡は続けて語る。

松岡「12年活動を続けていくなかで、ずっと同じことだけをやっているとどうしてもファンの方は離れていってしまうと感じています。『i☆Risがアニメになります』という前例のないプロジェクトをやっていくことで、今のファンの方に楽しんでもらうことはもちろん、過去に1度でもi☆Risを応援してくれていたファンの方々にも再び興味を持ってもらうことができると思います。劇場版アニメを通して、初めてi☆Risを知っていただいた方や過去にファンだった方に今のi☆Risの姿を届けられるのはとてもうれしいです。だから常にチャレンジし続けることが大事で。もちろんいろいろハードルはありますけど、まずはやってみる、という姿勢を大事にしていきたいですね。」

この12年の節目を通過点に、これからもi☆Risの歩みは続く。

松岡「ここまで長く続けてきたからこそ、声優アイドルといえばi☆Risだよねって言ってもらえるような、伝説になりたいと思っていて」

山北「おおー、いいね!」

若井「今後デビューする人たちに、i☆Risを指標にしてもらえるように」

松岡「オーディションで『i☆Risみたいになりたいです』っていう若い子は実際に増えてきていて、そういう目線で見られる立場にもなってきました。歴史に名を刻む存在になっていけるように、他の人がまだやっていないようなことに可能な限りチャレンジし続けていきたいですね」

(写真左から)
i☆Ris
山北 早紀

株式会社エイベックス・アニメーションレーベルズ
マネジメント・ライヴ制作本部
マネジメント&プロデュースグループ 第1マネジメントユニット
ユニットリーダー
松岡 亮文

i☆Ris
若井 友希

© エイベックス株式会社