夫が「部長」に昇進したのですが、残業が多くなかなか帰ってきません。昇進しない方がよかったのでしょうか…?

残業面から考える

残業が多くなかなか帰ってこないとなると、家庭にとっては一大事でしょう。夫が家を不在にする時間が増えるとなると、家事の分担や家庭における悩みの相談ができないなど、コミュニケーション不足が家庭内のトラブルの原因になり得るからです。

こういった場合、まずは残業時間から考えてみてもよいかもしれません。「労働政策研究・研修機構」の管理職の働き方に関する調査によると、部長クラスの平均時間は、18.1時間とされています。

月に20日出勤したとすると、毎日1時間程度の残業時間となるようです。「なかなか帰ってこない」と悩んでいるのであれば、残業時間が平均の18.1時間を大きく超えていることも想定されます。

この時間を超えて20時間、そこをさらに超えて30時間40時間などと、平均を大きく超える残業時間を課せられているような場合は、働きすぎかもしれません。法律では、残業時間は原則として、1月当たり45時間までとされています。それを目安に考えていくのもよいでしょう。

給与面から考える

残業が多くなっても、それに見合った収入があれば、一概に「昇格しなかった方がよかった」というわけではないでしょう。子どもの進学や自身の老後への備えなど、考え方次第では「お金を確保するための方法」として、昇進は非常に有効です。

参考までに、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、部長級の賃金は月額59万6000円、課長級の賃金は49万800円であり、毎月10万円以上の賃金差が生じています。単純計算では年120万円以上の差です。

額面収入で120万円あれば、子どもの大学進学費用の約1年分を賄えることでしょう。老後資金も、NISAやiDeCoを通じて長期間運用すれば、目標としている額の達成に役立つことでしょう。

その点を考えると、多少残業が多くなり、帰宅しないことが増えたとしても、「家族のため、将来のため」と納得できるかもしれません。

もし、「残業時間が増えて帰ってこないことが増えた」と悩んでいるときは、いったん収入についても考えてみるとよいでしょう。

夫婦で話し合ってみる

残業時間や収入面を考慮しても納得できない場合は、昇格しない現在と将来のライフプランや家族との関係性など、諸般の状況を踏まえて、夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。それらを基に話し合うことで、一人で悩んでいるときよりも、何かしら解決策が生まれやすくなる可能性があります。

特に夫の昇進とあれば、自分だけの問題ではなく、今後について考えていくに当たっては、夫の意思も大切になってきます。早めに夫婦で話し合っておけば、すれ違いが起きることも防げるでしょう。

まとめ

夫が部長への昇進を機に残業が増え、帰ってこないことが増えたという場合、残業時間や給与の面から考えつつ、家庭への負担も含めた影響について、家族で話し合ってみるとよいかもしれません。

簡単に解決できる内容ではないかもしれませんが、これはある意味では、将来をどうするのか考え直す機会でもあります。昇進については、全ての例に当てはまる答えがあるわけではありません。

どうしても悩んでしまって仕方ないのであれば、一度、夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。

出典

管理職の働き方に関する調査 労働政策研究・研修機構
令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況「役職別にみた賃金」

執筆者:柘植輝
行政書士

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