WRC第6戦開幕、混戦から抜け出すのはヒョンデか。トヨタか【ラリー・イタリア サルディニア プレビュー】

2024年5月31日から6月2日にかけて、世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・イタリア サルディニアがサルディニア島北西部の古都アルゲーロを起点としたグラベル(未舗装路)を舞台に開催される。

混戦模様のまま迎えるシーズン中盤、タイトル争いの分岐点

2024年のWRCは、開幕戦ラリー・モンテカルロでティエリー・ヌーヴィルが、第2戦ラリー・スウエーデンでエサペッカ・ラッピが優勝と、ヒョンデの開幕2連勝でスタート。その後、第3戦サファリ・ラリー・ケニアでカッレ・ロバンペラが、第4戦クロアチア・ラリー、第5戦ラリー・ポルトガルでセバスチャン・オジェが優勝と、トヨタが3連勝して、この第6戦ラリー・イタリア サルディニアを迎える。

ラリー・イタリア サルディニアが行われるグラベル路面。表面に砂が浮いているため滑りやすく、走行を重ねるとやがて下から硬い岩盤や石が現れる。

マニュファクチャラー選手権では、ヒョンデがトヨタを4ポイントリード。ドライバー選手権でもここまでヒョンデのヌーヴィルがシリーズをリードしている。

2024年 WRCドライバーズランキング(第5戦終了時)

1位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)110
2位 E.エバンス(トヨタ)86
3位 A.フルモー(Mスポーツ・フォード)79
4位 O.タナック(ヒョンデ)71
5位 S.オジェ(トヨタ)70
6位 勝田貴元(トヨタ)49
7位 K.ロバンペラ(トヨタ)36
8位 E.ラッピ(ヒョンデ))23

2024年 WRCマニュファクチャラーズズランキング(第5戦終了時)

1位 ヒョンデ 219
2位 トヨタ 215
3位 Mスポーツ・フォード 96

タイヤに厳しく、小さなミスも許されない難しいラリー

地中海に浮かぶサルディニア島のステージはグラベル(未舗装路)。路面が目の細かい砂に覆われているのが特徴で、ドライならば出走順が早いドライバーは不利な滑りやすいコンディションでの走行を強いられる一方で、同じステージを2回走行する「再走ステージ」では砂が履けて岩盤が露出してタイヤに大きなダメージを与える。加えて、気温が30度前後に達する年も多く、タイヤに厳しいラリーとして知られている。

昨年2023年ラリー・イタリア サルディニアの表彰台。ティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデ)がヒョンデ同士の争いを制した。

ステージは全体的に高速でありながら道幅が狭いセクションが多く、木や大きな岩が路肩に迫るコーナーも多いため小さなミスも許されない。

昨年のラリー・イタリア サルディニアではヒョンデのティエリー・ヌーヴィルが優勝。2位にもエサペッカ・ラッピが入り、ヒョンデの1-2フィニッシュとなった。トヨタ勢は不安定な天候の中、ウォータースプラッシュの罠に嵌り失速。カッレ・ロバンペラがなんとか3位に入った。

【参考】2023年 WRC第6戦ラリー・イタリア サルディニア 結果

1位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ i20 N ラリー1)3h40m01.4s
2位:E.ラッピ(ヒョンデ i20 N ラリー1)+33.0s
3位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m55.3s
4位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)+5m20.5s
5位:A.ミケルセン(シュコダ ファビア RS ラリー2) +9m33.3s
6位:T.スニネン(ヒョンデ i20 N ラリー1)+11m48.9s
7位:K.カエタノビッチ(シュコダ ファビアRS ラリー2)+12m46.1s
8位:Y.ロッセル(シトロエン C3 ラリー2)+12m53.5s
9位:M.マルチェク(シュコダ ファビア RS ラリー2)+15m33.8s
10位:E.エリック・カイス(シュコダ ファビア RS ラリー2)+16m49.4s
・・・・・・・
40位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1h10m11.0s

新しい開催フォーマットは戦いにどう影響するか

今年のラリー・イタリア サルディニアは、サービスパークが昨年のオルビアから、島北西部の古都アルゲーロに移動。大会期間を圧縮した新しいフォーマットにより、シェイクダウンは通常の木曜日午前中よりも一日遅い、5月31日の金曜日午前中に行われる。

ラリー・イタリア サルディニアのステージマップ。今年は大会期間を圧縮した新しいコンパクトなフォーマットで行われる。3日間ミッドデイサービスの設定はない。

その後、競技は31日金曜日午後2時33分からスタート。サービスパークの北東エリアで2本のステージを各2回走行、その合計距離は77.82kmと比較的短いが、ミッドデイサービスやタイヤフィッティングゾーンが設定されないため、タイヤマネージメントとクルマを傷めない走りが求められる。

競技2日目の6月1日土曜日は、大会のステージ距離の半分以上となる149kmを走行する最長の一日。デイ1よりもさらに東側のエリアで、まず午前中に2本のステージを各2回走行。午後は、ビッグジャンプで有名な「モンテ・レルノ」を含む2本のステージを各2回走る。デイ2もミッドデイサービスが設定されず、タイヤフィッティングゾーンでのタイヤ交換および簡単な整備作業のみで一日を走り切らなければならない。

最終日となる2日の日曜日は、サービスパークの北側エリアで2本のステージを各2回走行。この日もミッドデイサービスおよびタイヤフィッティングゾーンの設定はない。SS14の再走ステージとなるSS16は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。

48時間という短い時間内で全16本のステージを走行し、その合計距離は266.12kmとコンパクトな設定。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は、1035.46kmが予定されている。

このラリーに、トヨタはエルフィン・エバンス、セバスチャン・オジェ、勝田貴元の3台がワークスエントリー。一方のヒョンデは、ティエリー・ヌーヴィル、オイット・タナックに、グラベルを得意とするダニ・ソルドの布陣で対抗する。

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