イスラエル軍、ガザ・エジプト境界の「回廊」を掌握 トンネル発見と発表

イスラエル軍は29日、パレスチナ自治区ガザとエジプトの境界沿いの「フィラデルフィア回廊」と呼ばれる戦略上の重要地帯を掌握したと発表した。イスラエルとエジプトの間ではこのところ、エジプト兵が死亡する事案が発生するなど、緊張が高まっている。

フィラデルフィア回廊は、ガザとエジプトの境界(全長13キロメートル)のガザ側にある緩衝地帯で、場所によっては幅が100メートルほどしかない。

イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、「イスラエル国防軍(IDF)はここ数日で、エジプトと(ガザ南部の街)ラファの境界にあるフィラデルフィア回廊で作戦を統制する態勢を確立した」と述べた。

また、同回廊がイスラム組織ハマスにとって「生命線」となっており、ハマスはここで「定期的に武器をガザ地区に密輸してきた」と主張。そうした密輸に使われたトンネル約20本を一帯で発見したと述べた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、ハガリ氏はその後の記者団への説明で、すべてのトンネルがエジプトとつながっているかは分からないと述べた。

エジプトは以前、境界をまたぐトンネルを破壊し、武器の密輸をできなくしたと発表している。

今回のイスラエル軍の発表を受け、エジプトのアルカヘラ・ニュースは、イスラエルを非難するエジプト「高官」の話を伝えた。その高官は、イスラエルが「こうした疑惑を利用して、パレスチナ・ラファに対する作戦の継続と、政治的目的のための戦争の長期化を正当化しようとしている」と述べたという。

イスラエルとエジプトの緊張関係

エジプトはパレスチナを強力に支持しており、イスラエルに対しては、ガザでの軍事作戦で民間人を多数殺害していると非難している。

イスラエル軍は3週間前に、ハマスに対する攻撃の一環としてラファ検問所のガザ側を掌握。以来、エジプトとイスラエルの間で緊張が高まっている。

ラファ近郊のエジプトとの境界付近では今週、エジプト軍とイスラエル軍が関わった事案が発生し、エジプト兵1人が死亡した。

ガザで2006年にハマスが実権を握って以来、エジプトはイスラエルと同様、ガザとの境界を封鎖している。ハマスはイスラム主義組織「ムスリム同胞団」から分派した組織で、エジプトはテロ集団とみなして国内での活動を禁止している。

一方でエジプトは、ハマスとの対話のチャンネルは維持してきた。現在イスラエルとハマスの間で行われている、停戦協定と人質解放に向けた断続的な間接協議では、エジプトが仲介役を務めている。

(英語記事 Israel controls corridor on Gaza-Egypt border - military

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