トランプ前大統領の「口止め料」裁判、評議始まる どんな結果が考えられるのか

ドナルド・トランプ前米大統領が「不倫口止め料」の支払いをめぐって業務記録に虚偽記載をしたとして罪に問われている裁判は29日、陪審員12人が有罪か無罪かを判断する評議に入った。どんな結果が考えられるのか。

マンハッタンのニューヨーク州地裁で5週間にわたって続いてきた裁判は、前日の最終弁論に続いてこの日、ホアン・マーシャン判事が1時間以上かけて、陪審員らに評議や罪状について説明した。

その後、陪審員らは評議を開始したが、この日は評決に至らず、特定の証言について確認を求めた。評議は30日朝に再開される。

トランプ前大統領は、自身の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏に口止め料の立て替え分を支払い、それを弁護士費用として処理したなどとして、計34件の業務記録の虚偽記載の罪に問われている。前大統領は無罪を主張し、元ポルノ映画スターのストーミー・ダニエルズ氏との不倫関係についても否定している。

陪審員らの評議では以下のいずれかの結果が考えられる。

(1) 前大統領は有罪

検察が有罪評決を勝ち取るためには、陪審員12人全員が合理的な疑いを超えて、前大統領の有罪で意見を一致させる必要がある。

これは前大統領にとっては最悪のシナリオとなる。重罪犯として米大統領選に臨む、初の主要政党候補となる。

この評決に対しては、前大統領はほぼ間違いなく上訴するだろう。前大統領の弁護士はこれまで何度も審理無効を主張しているが、すべて認められていない。

有罪が確定すれば、1件につき最高4年の禁錮刑を受ける可能性がある。執行猶予つきのより軽い刑や罰金が言い渡されることも考えられる。ほとんどの専門家は、77歳という年齢から、前大統領が刑務所に収監される可能性は低いとみている。

「非暴力の犯罪で、(重罪としては)最も軽い犯罪だ」と、元ブルックリン検事のジュリー・レンデルマン氏は言う。「前科がないし、年齢の問題などから(収監は)かなり可能性が低い」。

仮にトランプ氏が収監されることになれば、刑務所での警護が難題となるだろう。

(2)前大統領は無罪

陪審員12人全員が、トランプ前大統領は合理的な疑いを超えて有罪だと、検察が立証できなかったと判断すれば、前大統領は無罪となる。起訴したマンハッタン地検にとっては大きな痛手となる。

一方、ホワイトハウス復帰を目指す前大統領にとっては大きな勝利となる。重罪犯になっても米大統領選に立候補することは法的には可能だが、有罪評決によって有権者の支持を損なう可能性があるからだ。

(3)評決不成立

陪審員12人が全員一致で有罪か無罪かの評決を出すことができなければ、評決不成立となる。

マーシャン判事は、陪審団から評決に達しないと報告を受けた場合、1、2回程度は、改めて評議するよう指示するかもしれない。

それでも評決に至らない場合、判事は評決不成立を宣言する。その場合、検察はその場で、新たな陪審員らによる裁判のやり直しを求めるか決定する。

(英語記事 After strict instructions, Trump jury begins deliberations

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