メジャー初Vを後押しした父の言葉 ザンダー・シャウフェレが振り返る「全米プロ」

全米プロでメジャー初優勝(Getty Images)

ザンダー・シャウフェレが5月、バルハラGCでの「全米プロ」でついにメジャー初制覇を遂げた。初日にメジャー史上初めて「62」を2回マークした選手になり、4日間通算21アンダーでメジャー最多アンダーパー記録も更新。PGAツアーのオリジナルコラムに手記を寄せた。

By ザンダー・シャウフェレ

メジャー初優勝の直後に父ステファンと電話(Getty Images)

僕はこれまで自分が大切にする物事や、周りの人々のことを人一倍強く信じてきた。やるべきことに励んで、自分ができると信じれば、結果はどうあれ楽しむことができる。長い間、そう考えてきて、忍耐強くある必要があったけれど、「全米プロ」でついに臨んだ結果を手に入れることができた。

メジャーでの優勝は格別な気分だ。たくさんの気持ちが胸に沸き立っている。間違いなく、最高の勝利だと思う。最後のパットが入った時は、本当に感情的になった。優勝自体が久々だったし、最終ラウンドは集中力を保てるよう努力した。

ここ数年、勝てない試合が続いてガマンを強いられてきた。ただし、勝つことは本当に甘美だが、結果でしかない。僕はコース上で、それぞれのシーンに対してうまく対処できたことに胸を張れる。

最終18番のグリーンに上がるとき、かなり緊張した。バーディパットは最初、スライスラインに見えた。それがグリーンを読み込んでいると、フックにも見えてきたんだ。「なんてことだ。これがウィニングパットなんて…」と思ったよ。

幸運だったのは上りだったことで、左のカップいっぱいを目がけて打ち出した。入ってくれてホッとした。まわりの皆が何を叫んでいたか覚えていないけれど、僕は思わず空を見上げた。絶対にタイトルを手に入れる、自分のゲームだと証明するんだと、終始、自分自身に言い続けた。スコア提出の椅子に座った時、様々な感情が胸で渦巻いていた。

表彰式では兄と叔父、そして夫人と記念撮影(Getty Images)

ことしも惜しい試合が何度もあった。でも決定的な何かが僕に欠けてけていたとは思わない。とにかく一生懸命であり続けて、経験を積まなければいけないと思っていた。前の週の「ウェルズファーゴ選手権」で2位に終わったときの感覚も、いつかきっと生きるはずだと。

この優勝はチームの勝利だ。エージェントを務めてくれている叔父がいて、兄のニコはプロの料理人ではないけれど、いつも僕の食事を作ってくれている。そして妻のマヤは僕にとって最も大事な存在だ。彼らと勝てたことが本当にうれしい。

優勝した時、母のピンイーはサンディエゴの自宅にいた。父のステファンはハワイにいて、表彰式の前に電話をした。僕はきっと泣いてしまうと思って、すぐに切ったよ。彼は僕のスイングコーチであり、人生のメンター。子どもを将来、成功に導くことこそを目標にしてきた。

父は週を通じてテキストメッセージを送ってくれていた。土曜日の夜には、「雨だれ石を穿(うが)つ」と。実はドイツ語だったから、英訳を聞かなきゃいけなかったんだけどね。ドイツには有名な哲学者がたくさんいる。父は読書家でもあり、多くのことを学び、僕に植え付けてくれた。スイングについては最近、コーチのクリス・コモに任せていて、僕も父も彼を信頼している。

僕はポジティブな自己暗示を大切にしてきた。言い聞かせて、自分を信じれば、何かが起きる。一日中、辛抱強くリーダーボードを見上げながら戦った。過去にはバックナインまでスコアを見ずにプレーした時もあったけれど、この最終日はずっと目をやった。自分のポジションをしっかり把握して、事が起こったときに自分の感情に向き合おうと思っていた。

メジャータイトルを手にしたけれど、まだひとつ目だ。僕たちはいま、高い山に挑んでいる。頂上にいるのはスコッティ・シェフラー。今回は勝った。でもまだスコッティにはあらゆる面で及ばない。やっとひとつ、山を登るためのフックを手に入れたところだと思うんだ。

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