“家族旅行で子どもに学校を休ませる”のはアリ?ナシ? 「誰かに迷惑かけるの?」「学業がおそろかに」賛否論争 教育委員会に聞いてみると… 新たな制度「ラーケーション」導入自治体も

今、SNS「X(旧ツイッター)」上で、「家族旅行を理由に子どもに学校を欠席させるのはアリなのか、ナシなのか」論争が巻き起こっています。
全国ではGWの中日を休みにしたり、「ラーケーション」という制度を導入したりして、平日に家族と過ごす中で学びを深めてもらおうとする自治体も徐々に増えてきています。
この旅行で学校休んでいいか問題、教育現場の見解は…?

「なんで家族旅行で学校休ませることに怒ってる人いるんだろ?」

今月27日、Xに投稿され話題となっている投稿。それは、「家族旅行で学校を休ませることに対して、怒っている人がいるのはなぜか、誰かに迷惑をかけているのか」というもの。
これをめぐってユーザーの間では、賛否両論飛び交っています。

「全く問題ない」「土日祝日休めない仕事の家庭もある」と理解を示す人もいれば、「学業がおろそかになる」「教員や周囲の子どもに迷惑がかかるのでは」と否定的な意見も。
今回の投稿の場合は義務教育課程でのケースということもあり、「保護者として教育を受けさせる義務を果たせていないのでは」と厳しく批判する意見も見受けられました。

旅行での「欠席」は認められる?どのような扱いに?

そもそも、学校を欠席する場合、
▼欠席(病気などによる欠席)
▼出席停止(指定感染症などによる欠席)
▼忌引(身内の不幸などによる欠席)
の3つに大きく分けられます。

(「出席停止」「忌引」については、基本的に欠席日数にカウントされることはありません)

このうち、「欠席」については、さらに
▼病欠(病気やけがによる欠席)
▼事故欠(家庭の都合による欠席)
に分けられます。

「家族旅行で学校を休むこと」について、教育現場はどう捉えているのでしょうか?地元の教育委員会に聞きました。

出雲市教育委員会の担当者
「旅行などによる欠席は、『事故欠』にあたります。
学校や自治体などによって判断は様々だと思いますが、そうした申し出があった場合、学校が否定することはなく、基本的にはご家庭の判断にゆだねる形になります。」

家庭によって、保護者が平日しか休めないなど様々な事情があるのも事実。
そうした状況もふまえ、学校を欠席するかどうかは各家庭の判断によるということです。

学校を休んだ分の授業の遅れについては…

出雲市教育委員会の担当者
「お子さんが平日に休まれた場合でも、その分授業は進みます。お子さんの勉強のアフターケアなど、家庭のほうでもお願いすることはあると思います。」

学習の遅れなどもあわせて、家庭の判断に任せるとのこと。
また、日直や給食当番などもあるので、可能であれば休みのタイミングを考慮してもらえると助かるということでした。

GW中日の「平日」が休みに?自治体の狙いは…

続いて話を伺ったのは鳥取市教育委員会。
実は鳥取市、令和4年度から「ある制度」を導入しています。

鳥取市教育委員会の担当者
「令和4年度から『体験的学習活動等休業日』の制度を取り入れています。」

「体験的学習活動等休業日」とは、家庭や地域における様々な体験活動の充実を図るため、自治体が独自の休校日を定めることができるというもの。

鳥取市では令和4年度から『やってみよう!でー(day)』として市立小・中・義務教育学校、市立幼稚園に導入。5月のゴールデンウィーク、そして11月の文化の日前後に独自に休みを設定し、子どもたちが家族や地域で過ごす時間にあててほしいとしています。

今年のゴールデンウィークは、連休の中日となる4月30日から5月2日までの3日間を休みとすることで、鳥取市の子どもたちは10連休となりました。

鳥取市教育委員会の担当者
「普段学校ではできない家庭や地域における体験活動を増やすこと、そして、この機会に保護者や教職員についても有給休暇の取得促進の機運を高めて、ゆくゆくは社会全体の働き方改革につなげられたらという狙いがあります。
今年で導入から3年目になりますが、実際に保護者のアンケートでは『こういう制度を理由にすることで会社にも休みを申請しやすかった』という声もありました。」

教職員もこの期間は有給休暇を取得しやすく、家庭の時間を確保できるというメリットがあったということです。

一方で、保護者からはこんな意見も。

鳥取市教育委員会の担当者
「やはり、『休みがとれない』「保護者の負担が増える』といったお声もありました。
お子さんがお休みになっても、仕事を休めない保護者の方は多くいらっしゃいます。期間中も放課後児童クラブを開設し、こうした家庭の受け皿となるよう対応しています。」

中には、ゴールデンウィークなどは繁忙期となり仕事を休めないため、別の時期に休みをあてられないかという声もあるとのこと。
鳥取市ではこうしたアンケート内容を踏まえ、今後「体験的学習活動等休業日」がよりよい制度となるよう検討していくということです。

土日に休みにくい家庭も…全国で広がる「ラーケーション制度」とは?

一方、今、全国で徐々に広がりを見せているのが「ラーケーション」という制度です。

「ラーケーション」は、子どもの学び「ラーニング」と、保護者の休暇「バケーション」をかけあわせたもの。
子どもが平日に学校を休み、家庭や地域などで体験活動などをすることで学びを深めてもらおうという取り組みです。

全国に先駆けて2023年度に愛知県が導入し、2024年度は茨城県などでも取り組みが始まりました。

元々愛知県で進められている「休み方改革プロジェクト」の一環で始まったラーケーション制度。
保護者が土日に働いている家庭では、なかなか子どもと過ごす時間を取りづらいという現状を打開するという目的がありました。

愛知県では、「ラーケーションの日」は「学校外での体験や学びの活動を、子どもが保護者等と一緒に計画し、平日に実行できる日」としていて、その日は登校しなくても欠席とはならず、年3日まで取得できるといいます。

制度開始からまだ1年経っていませんが、愛知県が公開しているアンケート結果によりますと、市町村立学校の保護者のうち17.3%がラーケーションの日を「すでに取得した」と回答。
「サービス業や医療、福祉関係などで土日も仕事の保護者にとっては、とてもよいと思う」「混雑を避けて、平日に家族で活動ができることがうれしい」などと制度を歓迎する声が多くあったといいます。

一方で、「学習の進度が心配」「ラーケーションの日を取ったことによって、友達の中で浮いてしまわないか心配である」といった声もあったということです。

「家族旅行で学校を休んでいいか問題」…議論の根底には不公平感?

今回、議論となっている「家族旅行で学校を休んでいいか問題」の根底には“不公平感”があるのではないかー。

全国に先駆けてラーケーション制度を取り入れた愛知県において、唯一制度を導入しないことを決めた名古屋市は、ラーケーションについて問う市民の声に対し、HP上でこのように回答しています。

【名古屋市「市民の声」より】
Q.ラーケーションの導入について
名古屋市では導入しないとのことですが、取得できる家庭と取得できない家庭で差別を助長する、不公平感が生まれるという理由は本当でしょうか?現在、コロナ禍では欠席理由をわざわざ子どもたちに言わないし、子どもたちも聞いてはいけないと指導されています。そもそも、取得する・しないは、家庭の教育方針ですし、差別意識、不公平感は生まれないのではないのでしょうか?土日に休みの方のみではありません。平日休みの親御さんもたくさんいます。そういった方が子ども達と旅行や外出できない事の方が問題だと思います。

A.「ラーケーション」につきましては、欠席理由を「聞く」「聞かない」ではなく、ご家庭などの様々な事情で、「とれる子」と「とれない子」が生じるので、公平性に欠けると考えます。学校生活等で話題になったとき、「とれない子」がその様子をどのように感じるのかなどが懸念されます。
名古屋市教育委員会では、「休み方改革」の全体的な趣旨については理解しております。保護者から旅行や外出などで休む申し出があった場合は、これまで同様「家事都合」の欠席扱いになります。「家事都合」の欠席により児童生徒が不利益になることはありません。
(以上、名古屋市「市民の声」より)

公平性、そして学習進度など課題もありますが、家族の時間確保や休み方改革が期待される「ラーケーション」。
今後、全国でさらなる広がりを見せるのでしょうか?

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