【安田記念】「前年マイルCS5着以下馬」が複回収率151% データで導く穴馬候補3頭

ⒸSPAIA

データで見る「穴候補3頭」

今週末の東京メインは安田記念。天皇賞(春)から続く6週連続GⅠのトリを飾る、古馬のマイル王決定戦だ。

昨年までこの路線に君臨したソングライン、シュネルマイスターが引退し、今のマイル界は絶対的なエース不在。そこに香港からロマンチックウォリアーとヴォイッジバブルを迎え、能力比較の難しいメンバー構成となる。今週も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。

「マイルCS大敗馬」にお宝潜む レッドモンレーヴ

1頭目はレッドモンレーヴをチョイス。昨年は京王杯SCで重賞初制覇を飾ったが、安田記念6着、マイルCS9着とGⅠではもう一歩のレースが続いた。ただ、今回はその壁をぶち破る可能性がある。

ひと口に「古馬のマイルGⅠ」といっても、春の東京らしい高速馬場でよどみなく進む安田記念と、秋の連続開催の後半、京都外回りのアップダウンで緩急が生まれるマイルCSでは問われる適性がまるで異なる。安田記念と(京都開催の)マイルCSは着順があまりリンクしない。これをデータで示そう。

過去10年の安田記念において、前年マイルCS(※京都のみ)の1~4着馬は【0-1-2-14】複勝率17.6%、複回収率41%に対し、同5着以下馬は【2-2-1-22】複勝率18.5%、単回収率182%、複回収率151%。マイルCSで好走しようが大敗しようが複勝率にほぼ差がない。であれば当然、大敗によって評価を下げた馬に妙味が生じる。

誤解なきように書いておくと、マイルCSを単純な実力不足で惨敗した馬はやっぱり厳しい。狙い目は「マイルCSで1~9番人気に推されるも5着以下の馬」で、その成績は【2-2-1-11】複勝率31.3%、単回収率308%、複回収率255%。一定の実力を持ちながら、京都コースが適性的にやや合わなかったようなタイプを拾っていこう。

この点から浮上するのがマイルCS8番人気9着レッドモンレーヴ。前走の上がり32.2秒が物語る通り、キレが生きる軽い馬場の東京がベスト条件であるのは間違いない。昨年のこのレースはGⅠ初挑戦で跳ね返されたが、当時の1、3、5着馬が不在となる今回は上位進出が見込めるだろう。

「2~3歳マイルGⅠ勝ち馬」の復活あるぞ ダノンスコーピオン

続いてダノンスコーピオンを取り上げる。2歳時には朝日杯FSでドウデュース、セリフォスに次ぐ3着となり、3歳春にはNHKマイルCを勝った。その後は不振にあえいでいるが、福永祐一厩舎に転厩して迎えた前走は4着と復調の兆しを見せた。

安田記念で穴を開けた馬を眺めていくと、14年2着のグランプリボス、16年1着&17年2着ロゴタイプ、22年3着サリオスなど、いわゆる「新星」ではなく「人気を落としていたGⅠ実績馬」が目立つ。このあたりをデータで調べてみよう。

「2~3歳マイルGⅠの勝ち馬」が安田記念に出走した際の成績は、過去10年で【2-7-4-19】複勝率40.6%、複回収率166%とやはり優秀だ。それも5歳以上なら【1-5-2-7】複勝率53.3%、複回収率286%とさらに上昇する。古くはアドマイヤコジーンの復活劇もあったように、若い頃に栄華を極めたマイラーが雌伏の時を経て再浮上してくるレース。安田記念はそんな場になっている。

ダノンスコーピオンもNHKマイルC勝ち馬ということで、このコース、季節への適性は言うまでもない。環境が変わって心身ともに走れる状態が戻ってきたのであれば、非常に怖い1頭になる。

知る人ぞ知る腕達者・長岡禎仁 ガイアフォース

最後はガイアフォースを選んだ。臨戦過程はダートからの変則ローテとなるが、もともと芝で活躍してきた馬。特に不安はない。

今回の「推しポイント」は前走に引き続き長岡禎仁騎手が騎乗すること。リーディング順位こそ目立たないが、この長岡騎手、知る人ぞ知る腕達者のジョッキーである。

まず重賞騎乗時の成績は通算で【1-2-0-20】複勝率13.0%、複回収率146%。騎乗機会には恵まれていないものの、10番人気アールスターで小倉記念制覇、16番人気ケイティブレイブでフェブラリーS2着、そして5番人気ガイアフォースでのフェブラリーS2着があり、回収率は高い。

クラスを問わずに直近1年間の成績を見ると【13-9-13-144】複勝率19.6%。単回収率107%、複回収率97%は水準以上だ。うち、杉山晴紀厩舎とのタッグなら【3-4-3-10】複勝率50.0%、複回収率129%とトップジョッキー並みの数字になる。ちなみに着外は半分が人気薄によるもので、単勝オッズ20倍未満なら【3-4-3-5】複勝率66.7%、複回収率172%。今回のガイアフォースが20倍を切るかは別にして、長岡騎手の頼もしさを象徴するデータとして紹介しておこう。

ガイアフォース自身の話に戻す。ややワンペースなところのある馬だが、序盤から速いラップを連続して刻み続けるような展開にツボを持っていて、1000m通過58.0秒以下のレースでは【1-2-0-2】(着外は安田記念4着と天皇賞(秋)5着)と力を見せてくる。展開に左右される面は否めないが、前が緩めずに引っ張っていく競馬になればしぶとく伸びてくるはずだ。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。



© 株式会社グラッドキューブ